ハイパーインフレの歴史

 ハイパーインフレとは、インフレ(物価上昇)が急激に起こることです。

 有名な事例としては、第一次世界大戦後〜第二次世界対戦前のドイツで起こったインフレで、パン1つに1兆マルクの値段がついたことを、世界史の授業で学習したことと思います。
 ハイパーインフレが起こってしまうと、その経済圏の経済活動が完全に麻痺してしまうため、普通に生活することはおろか、生存することすら危ぶまれます。

 そして、このハイパーインフレは歴史上の出来事ではなく、近年でも頻繁に起こっており、直近では、2016年にベネズエラで起こっており、2020年のインフレ率は6500%と未だ混乱が続いています。

 今回は、そんなハイパーインフレが日本やアメリカ、ヨーロッパのような先進国でも起こるのか、また起きた際に資産を防衛するにはどのように対策すれば良いのかについて解説していきます。


『アメリカでハイパーインフレが起こる!』

 この問題に対して、最近ツイッター社のCEOジャック・ドーシー氏が面白い発言をしています。
 2021年10月23日の投稿で、『ハイパーインフレは起こりつつある』という発言をしており、それに対るナイジェリア人の返信『私の国では年間16%のインフレを経験している』に対して、『まもなくアメリカでも起こり、世界中に広まる』というコメントを残しました。
 あくまで一個人の発言ですので、杞憂に終わる可能性が高いと思いますが、我々がハイパーインフレについて考えるきっかけを与えてくれたように感じます。


日本でもハイパーインフレは起こる?

 結論から申し上げると、日本やアメリカのような先進国でハイパーインフレが起こる可能性は、限りなくゼロに近いです。
 ハイパーインフレが起こるためには、その国の通貨の信用が失墜する必要があります。

 過去にハイパーインフレが起きた理由についてそれぞれ解説します。

ドイツの場合

 例えば最初に上げたドイツの例では、第一次世界大戦で敗北したドイツに対して、イギリスを始めとした戦勝国が、到底支払えないような賠償金を請求したり、ドイツ国内で最大の工業地帯を勝手に取り上げたりと、国家の運営が不可能なほどのダメージを与えました。
 これにより、通貨の価値が失墜して、歴史的なハイパーインフレが起こりました。

ベネズエラの場合

 ベネズエラにしてもハイパーインフレになった明確な理由があります。

 一つは、大統領の独裁体制になっていることです。大統領の権限が強すぎるので、反体制派の財産の没収など日常茶飯事であり、そのような国に海外からの資本が投入されることはないでしょう。

 もう一つの理由は、石油の産出に頼った経済を行っていたことです。南米の近隣諸国があらゆる産業を発展させていく中で、ベネズエラは石油輸出の資金にあぐらをかいて、新たな産業を興すことはありませんでした。
 そんな折に、シェール革命など、定期的に起こる石油価格の暴落により大ダメージを負い、さらには、リーマンショックが追い打ちとなり、ベネズエラ経済は崩壊しました。


日本でハイパーインフレが起こるには

 このように、ハイパーインフレが起こるには、かなり明確な理由があり、明確な兆候があります。日本のような経済基盤がしっかりしている国でそのような兆候があれば、直ちに政府や中央銀行が動きます。
 よって、日本でハイパーインフレを起こすには、第三次世界大戦で日本が戦場になるか、超巨大地震で日本全体のインフラが同時に破壊されるようなかなり強力な力が必要になるでしょう。


ハイパーインフレへの対策

 それでももし、ハイパーインフレに備えたいと考えた場合、取るべき手段は3つあります。
 基本的には、日本円の価値が限りなくゼロに近くなるということなので、資金を物に変換するか、海外の通貨に交換することが有効です。

金(きん)

 ひとつ目の対策は、金(きん)を保有することです。
 金は数千年規模で価値を保障されてきた歴史があります。
 現在は金本位制度ではないので、その価値の裏付けはかつてよりも低くなっていますが、それでもまだまだ『有事の際の金買い』というのはセオリーです。
 日本がハイパーインフレになるような有事に取る選択肢としては上策といえるでしょう。

米ドル

 ハイパーインフレは、基本的に1つの国で起こります。もし日本でハイパーインフレが起きても、他の国の通貨への影響は限定的です。
 よって、日本円の価値だけが暴落しているはずなので、アメリカドルに資産を移しておけば、その影響を受けずに資産を守ることが出来ます。
 また、為替の世界はシーソーのように一方が下がれば、他方が上がるようになっているので、日本円が暴落するとアメリカドルが暴騰する可能性もあります。(ユーロやポンドなど他の通貨が上昇する可能性もありますが。)

仮想通貨

 効果は未知数ですが、仮想通貨に資金を逃がすことも選択肢としてありそうです。
 実際にジンバブエでは、資産を仮想通貨に変換して保有したり、海外送金したりと、自国通貨以上に信頼を勝ち取っています。
 ただし、仮想通貨自体が歴史が浅く、日本がハイパーインフレになるような際にどのような値動きをするのかも不明瞭ですし、元々の値動きも激しいので、資産の防衛という観点から見ると疑問が残ります。
 金や米ドルに比べれば、下策なのは間違いありません。


おすすめしないハイパーインフレ対策

 インフレ=物価高という関係から、不動産投資をおすすめするサイトも多いですが、ハイパーインフレ時の不動産投資は危険です。
 『物価が上がるから、家賃も上がり、売却益も狙える。』というのが、不動産投資をおすすめする人の主張ですが、先にあげたように、国内がハイパーインフレになったとしたら、生存が脅かされるレベルで経済活動が崩壊します。
 国内経済が崩壊している状態で、何倍にも高騰した家賃を払える人がどれだけいるでしょうか。また、売却して現金化を考えても、買い手が付くとは思えません。

 国内に資産をおいていては、ハイパーインフレの影響を避けることは不可能でしょう。


『ハイパーインフレ対策』まとめ

 日本のハイパーインフレへの対策は、金、米ドル、仮想通貨のような、日本経済の影響を受けない金融商品に資産を退避させることが効果的です。
 しかし、日本のような金融基盤がしっかりしている国でハイパーインフレが起こる可能性は、小数点以下の確率になるでしょう。
 そのような事態を過度に恐れるよりも、10年に一度必ず起こる世界的な金融危機に備える方が賢明です。
 ネットやテレビは、過度な報道がされやすいので、振り回されないように金融リテラシーを磨いておきたいものですね。