ハイパーインフレとは?


 ハイパーインフレとは、インフレ(物価上昇)が急激に起こることです。


 有名な事例としては、第一次世界大戦後〜第二次世界対戦前のドイツで起こったインフレで、パン1つに1兆マルクの値段がついたことを、世界史の授業で学習したことと思います。

 ハイパーインフレが起こってしまうと、その経済圏の経済活動が完全に麻痺してしまうため、普通に生活することはおろか、生存することすら危ぶまれます。


 そして、このハイパーインフレは歴史上の出来事ではなく、近年でも頻繁に起こっており、直近では、2016年にベネズエラで起こっており、2020年のインフレ率は6500%と未だ混乱が続いています。


 今回は、そんなハイパーインフレが日本やアメリカ、ヨーロッパのような先進国でも起こるのか、またハイパーインフレで資産を守る方法についてを解説します。


ハイパーインフレはなぜ起こるのか?

 ハイパーインフレとは、その国の通貨の価値が下がり物の値段が上がることを指します。

 ハイパーインフレが起こる理由は、国内の物資量が極端に減少し、相対的に物資の値段が高騰するからです。

 戦争や災害などで自国内の物資が急激に減少する時に、ハイパーインフレは起こります。


日本でハイパーインフレが起こる可能性は?


 結論から申し上げると、日本やアメリカのような先進国でハイパーインフレが起こる可能性は、限りなくゼロに近いです。

 ハイパーインフレが起こるためには、その国の通貨の信用が失墜する必要があります。


 過去にハイパーインフレが起きた理由を見れば、日本でハイパーインフレが起こることはまずないことが分かります。


ハイパーインフレの過去の事例

ドイツの場合

 例えば最初に上げたドイツの例では、第一次世界大戦で敗北したドイツに対して、イギリスを始めとした戦勝国が、到底支払えないような賠償金を請求したり、ドイツ国内で最大の工業地帯を勝手に取り上げたりと、国家の運営が不可能なほどのダメージを与えました。

 これにより、通貨の価値が失墜して、歴史的なハイパーインフレが起こりました。


ベネズエラの場合

 ベネズエラにしてもハイパーインフレになった明確な理由があります。


 一つは、大統領の独裁体制になっていることです。大統領の権限が強すぎるので、反体制派の財産の没収など日常茶飯事であり、そのような国に海外からの資本が投入されることはないでしょう。


 もう一つの理由は、石油の産出に頼った経済を行っていたことです。南米の近隣諸国があらゆる産業を発展させていく中で、ベネズエラは石油輸出の資金にあぐらをかいて、新たな産業を興すことはありませんでした。

 そんな折に、シェール革命など、定期的に起こる石油価格の暴落により大ダメージを負い、さらには、リーマンショックが追い打ちとなり、ベネズエラ経済は崩壊しました。


ジンバブエの場合

 ジンバブエでハイパーインフレが起こったのは、2000年頃です。

 アフリカの南部に位置するジンバブエは、植民地時代の名残で白人が広大な土地を所有し大規模な農業を行っていました。

 そのことを不満に思っていた政府は、2000年に白人が所有する土地を強制的に取り上げてしまいました。

 その結果、国としての信用を失い海外資本が撤退し、ノウハウを持たない現地民だけでは農業を行うことも難しく、国内の物資が急激に失われてしまいました。


 その後は、何度も新通貨を発行して混乱を収めようとしましたが失敗し、最終的に自国通貨を廃止して外貨を導入することで通貨の価値が安定しました。


ハンガリーの場合

 ハンガリーではハイパーインフレが起きたのは1945年のことです。

 東欧に位置するハンガリーでは、戦時中はドイツ、戦後にはソ連が進駐し、急激な社会情勢の変化により物資が不足しました。

 ピークの頃には1日に物価が2倍になっていたり、1万京ペンゴ紙幣が発行されたりと、他国の例と比べても桁違いなインフレが起きていました。

 最終的には、1000秭(※億→兆→京→垓→秭)を新通貨1フォリントと交換して国内の安定化を進めました。


日本でハイパーインフレが起こるには?

 このように、ハイパーインフレが起こるにはかなり明確な理由があり、明確な兆候があります。

 日本のような経済基盤がしっかりしている国でそのような兆候があれば、直ちに政府や中央銀行が動きます。

 よって、日本でハイパーインフレを起こすには、第三次世界大戦で日本が戦場になるか、超巨大地震で日本全体のインフラが同時に破壊されるようなかなり強力な力が必要になるでしょう。


ハイパーインフレ下で儲けるための資産4選!


 それでももし、日本でハイパーインフレが起こると予想する場合、稼ぐ手段は3つあります。

 基本的には、日本円の価値が限りなくゼロに近くなるということなので、資金を物に変換するか、海外の通貨に交換することが有効です。


金(きん)

 ひとつ目の対策は、金(きん)を保有することです。

 金は数千年規模で価値を保障されてきた歴史があります。

 現在は金本位制度ではないので、その価値の裏付けはかつてよりも低くなっていますが、それでもまだまだ『有事の際の金買い』というのはセオリーです。

 日本がハイパーインフレになるような有事に取る選択肢としては上策といえるでしょう。


米ドル

 ハイパーインフレは、基本的に1つの国で起こります。もし日本でハイパーインフレが起きても、他の国の通貨への影響は限定的です。

 よって、日本円の価値だけが暴落しているはずなので、アメリカドルに資産を移しておけば、その影響を受けずに資産を守ることが出来ます。

 また、為替の世界はシーソーのように一方が下がれば、他方が上がるようになっているので、日本円が暴落するとアメリカドルが暴騰する可能性が高いです。(ユーロやポンドなど他の通貨が上昇する可能性もありますが。)


仮想通貨

 効果は未知数ですが、仮想通貨に資金を逃がすことも選択肢としてありそうです。

 実際にジンバブエでは、資産を仮想通貨に変換して保有したり、海外送金したりと、自国通貨以上に信頼を勝ち取っています。

 ただし、仮想通貨自体が歴史が浅く、日本がハイパーインフレになるような際にどのような値動きをするのかも不明瞭ですし元々の値動きも激しいので、他の選択肢に比べて『攻めの投資』になるでしょう。


 金や米ドルに比べれば、下策なのは間違いありません。


コモディティ

 コモディティとは"商品"のことで、トウモロコシや大豆などの食品、石油や天然ガスなどのエネルギー、金や鉄などの金属とあらゆるものを指します。

 ハイパーインフレは、通貨の価値が下がり物の価値が上がることなので、物(コモディティ)に投資すれば資産を減らさずに済むでしょう。


ハイパーインフレ化で必要なスキル

物を生み出す技術

 ハイパーインフレになり紙幣が紙くずになった世界では、物が重要な価値を生み物々交換も盛んに行われます。

 よって、物を生み出すような技術を持っていると、スキルが資産価値になります。


自給自足

 お金の価値が無くなると物流が麻痺します。

 もちろんスーパーに行っても食べるものは売っていないです。

 自給自足のスキルがハイパーインフレ下で生きていくためにもっとも需要なスキルになるでしょう。


おすすめしないハイパーインフレ対策


 インフレ=物価高という関係から、不動産投資をおすすめするサイトも多いですが、ハイパーインフレ時の不動産投資は危険です。

 『物価が上がるから、家賃も上がり、売却益も狙える。』というのが、不動産投資をおすすめする人の主張ですが、先にあげたように、国内がハイパーインフレになったとしたら生存が脅かされるレベルで経済活動が崩壊します。

 国内経済が崩壊している状態で、何倍にも高騰した家賃を払える人がどれだけいるでしょうか。また、売却して現金化を考えても、買い手が付くとは思えません。


 国内に資産をおいていては、ハイパーインフレの影響を避けることは不可能でしょう。


アメリカやEUでハイパーインフレが起きた時の対処法

 ここまで日本がハイパーインフレになった時の儲け方を解説してきましたが、アメリカやEU(ヨーロッパ連合)でハイパーインフレが起きた時の稼ぎ方はあるのでしょうか。

 結論を申し上げると、日本円または日本の不動産や株式を持つのが筋が良いと考えます。


 先程の日本にハイパーインフレが起きた時と反対に、アメリカやEU内でハイパーインフレが起これば、ドルやユーロが暴落し相対的に円高になるのは明白です。

 よって、素直に日本円を保有しておき、米ドルやユーロが暴落後の上昇を始めた頃にゆっくり米ドルやユーロを買っていけば、歴史的な安値でそれらを保有出来るでしょう。


 円をただ持っているだけでは、資産が増えないので不動産や株式を保有しておく手もありますが、アメリカやEUがハイパーインフレになるような金融危機が起これば、日本国内の投資家も不動産や株式などのリスク資産を手放して安全資産の現金に替えてくるので、手持ちの資産が目減りします。


まとめ:ハイパーインフレに過度に怯えない


 日本のハイパーインフレへの対策は、金、米ドル、仮想通貨のような、日本経済の影響を受けない金融商品に資産を退避させることが効果的です。


 しかし、日本のような金融基盤がしっかりしている国でハイパーインフレが起こる可能性は、小数点以下の確率になるでしょう。



 そのような事態を過度に恐れるよりも、10年に一度必ず起こる世界的な金融危機に備える方が賢明です。

 ネットやテレビは、過度な報道がされやすいので、振り回されないように金融リテラシーを磨いておきたいものですね。