唐揚げ専門店は儲かる?


 『タピオカ』ブームの終焉に合わせて台頭してきた『唐揚げ専門店』。

 2021年頃に一気に増えた唐揚げ専門店は、2023年に入り一気に廃業が行われています。


 この記事では、唐揚げ専門店の平均年収や初期費用、メリット・デメリット、さらに儲けるコツを解説します。


唐揚げ専門店の平均年収


 唐揚げ専門店の平均年収はおよそ500万円です。

 一見するとかなり高いように感じますが、3年以内の廃業率が70%と言われています。

 生き残った30%のエリートの平均年収が500万円なので、決して高い数値ではないと感じます。

 それでも他の飲食店に比べると、年収500万円はかなり高いです。


唐揚げ専門店のメリット


メリット1:原価率

 唐揚げの原価にかかるほとんどの費用は、もちろん鶏肉代です。


 ひとえに鶏肉と言っても、『若鶏なのか地鶏なのか』、『国産なのか海外産なのか』、『胸肉なのかもも肉なのか』によって多少の差はありますが、鶏肉の原価はおおよそ4個で40-60円が相場です。

 これは、お弁当用の小さめの唐揚げの場合なので、お持ち帰りの専門店のような少し大きめの物の場合、100円くらいになるかもしれません。


 しかし、『原価率』30%と言われている外食産業の中で、300円で売っても『原価率約15%と他の商品と比べてかなりの優位性があります。


メリット2:設備投資

 唐揚げ専門店は、多くの場合たった一つの商品を販売します。

 トッピングやタレでレパートリーを広げることはありますが、作り方についてはほとんど同じです。


 よって、大型設備も鶏肉を保存する冷蔵庫とフライヤーのみしかなく、中古で調達するのなら20-30万円もあれば揃えられるでしょう。

 新品で揃えたとしても200万円前後で揃えられます。また、設備が少ないので店舗面積が狭くても大丈夫です。


 さらには、自分で商売をせず人を雇う場合も、専門的な技術は必要ないため、アルバイトで十分対応出来ますし、人材を育てるのにかかる時間も費用もわずかです。


メリット3:フランチャイズ不要

 フランチャイズが不要なのも、唐揚げ専門店のメリットです。

 多くの移動販売や小規模店舗には有名なFCがあり、その看板を借りた方が同業者と差別化出来るため、FCに加盟して多額のマージンを毎月払う必要があります。

 飲食店のFC加盟料は売上に対して3~10%が相場です。

 利益に対してではなく売り上げに対してなので、赤字の場合でもFC料は払わなければなりません


 しかし、唐揚げ専門店に関してはそれほど有名な企業が無いので、自身で始めてもデメリットはありません。

 『唐揚げ』というワードが一番の看板になります。


 また、唐揚げは簡単に作れる商品のため、FCからノウハウを仕入れる必要もありません。


メリット4:幅広い支持層

 唐揚げは国民的な料理です。お昼や晩ごはんのおかずにもなりますし、ビールのおつまみにも、子供のおやつ食べ歩きにも需要があります。

 あまり唐揚げが好きじゃないという方は聞かないはずです。

 実際に好きな食べ物ランキングには、老若男女問わず唐揚げはランクインしています。

 客層が圧倒的に広いことが唐揚げ専門店の強みです。


メリット5:簡単な調理

 唐揚げには様々な味付けがあります。

 プレーン・チキン南蛮・油淋鶏・おろしポン酢・明太マヨなど、単一の商品なのに他店と差別化を図ったり、リピーターが飽きないような味付けの種類の豊富さがあります。

 これらは揚げた後の唐揚げにトッピングするだけなので、アルバイトでも簡単に作ることが出来ます。

 さらに唐揚げ自体はどれも同じなので、他の飲食店に比べて廃棄ロスが出にくいメリットもあります。


メリット6:テイクアウト向き

 近年需要が高まっているテイクアウトに唐揚げ専門店は対応しています。

 よって、『ラーメン屋』や『うどん屋』のようなテイクアウト出来ない飲食店と簡単に差別化されます。

 近くにテイクアウトに対応している飲食店が少なければ、テイクアウト需要を独占出来るでしょう。


唐揚げ専門店のデメリット


デメリット1:参入障壁の低さ

 唐揚げ専門店の最大のデメリットは、参入障壁の低さです。

 メリットで述べた初期費用の安さや調理の手軽さは、そのままライバル店の出店のリスクになります。

 もし、数件隣に唐揚げ専門店が出来てしまえば、突如売上が半減することになるでしょう。


 それでも、既に地元の顧客の心を掴んでいれば、ライバル店に顧客を奪われることもなく、早期にライバル店を撤退に追い込めるでしょう。


デメリット2:サブメニューの少なさ

 多くの飲食店は、メインメニューではなく、ドリンクやサイドメニューで利益を上げています。

 しかし唐揚げ専門店は、唐揚げ単品を買うことがほとんどのため客単価が固定化されてしまいます。

 大盛りメニューや高いトッピングメニューを作るなどして、少しでも客単価を上げる工夫をしましょう。


デメリット3:話題性が強い

 ここ数年は唐揚げブームで一気に店舗数を増やした後、珍しさが無くなると途端に飽きられて一気に廃業していきました。

 このようにブームに頼った経営は、安定感や継続性がなくおすすめ出来ません。


 幸いなことに、今回のブームに乗って出店したお店のほとんどは既に撤退しているので、これから地に足をつけて営業をしていけば生き残ることは可能でしょう。


デメリット4:客単価が低い

 唐揚げ専門店の客単価は約500円です。

 『ラーメン屋』の客単価が約1,000円、『焼肉屋』の客単価が約4,000円であることと比べると、唐揚げ屋が同じ売り上げになるには『ラーメン屋』の2倍『焼肉屋』の8倍もの集客が必要になります。

 このように客単価の低いビジネスの方が多くの客数を求められ、経営難易度が高いと考えられます。


デメリット5:差別化が難しい

 『ラーメン屋』なら麺の太さやスープの種類、トッピングの量など他店との差別化が図りやすいです。

 しかし、唐揚げは単純な料理である分だけ多店舗との差別化が難しいです。

 さらに言えばスーパーの惣菜の唐揚げなら他の買い物のついでに変えるので、スーパーの惣菜の唐揚げよりも圧倒的に美味しい唐揚げでないのなら、わざわざ唐揚げ専門店で唐揚げを買う人は少ないでしょう。


唐揚げ専門店の儲かるコツ


コツ1:唐揚げグランプリに出場する

 唐揚げ専門店の多くは、『唐揚げグランプリ金賞受賞』ののぼり旗を掲げています。

 日本人は、このような権威に弱い傾向にあります。

 金賞と聞くと敷居が高そうですが、唐揚げグランプリは毎年行われており、毎年100近い店舗が受賞しているので、根気強くエントリーしていれば、いずれ取れるかもしれません。


 長年経営していく計画があるなら、1年目から挑戦していくと良いでしょう。


コツ2:立地

 味や値段については、営業開始後に少しずつ変えていくことも出来ますが、立地については、簡単に変えることは出来ません。

 適当に決めるのではなく、出店候補地に一日滞在してみて、人通りの量を調べるくらいのことはするべきです。

 唐揚げ専門店はテイクアウト形式が一般的なため、必ずしも駅前の賃料が高い物件でなくても繁盛店にすることも出来ます。


コツ3:初期費用を抑える

 新しいビジネスを始める高揚感もあって、高い費用を掛けて新品の機材を揃える人が多いです。

 しかし、ビジネスを成功させるための鉄則は初期費用をどれだけ安く抑えるかです。


 極力中古品で揃えて、浮いた資金をビジネスが安定するまでの生活費にしましょう。

 儲かってから、使ってみて不便だった物を新品に変えればよいのです。


コツ4:1年分の生活費を貯めておく

 個人経営の飲食店が廃業する直接の原因は、生活費の枯渇です。

 脱サラする前にある程度の生活費を貯金しているケースが多いですが、開店資金や運転資金に想定より多くのお金をかけてしまい、生活費が足りなくなることが多くあります。


 飲食店ビジネスは、近隣住民に周知され、購入者の一部がリピーターになり経営が安定するまで、1年は掛かります。

 それまでに生活費として貯めていた貯金が無くなってしまうから、1年以内の廃業率が高いのです。

 経営が安定してくるまでの1年間を無収入でも生活が出来るように、開業前に1年分の生活費を貯金しておきましょう。


コツ5:人柄の良さ

 明るい笑顔は人を呼び寄せる力があります。

 目の前の通行人を客に変える力もありますし、リピーターを増やす力もあります。

 タダで出来て効果の高い施策になるので、仕事中は常に笑顔を絶やさないようにしましょう。


コツ6:イベント出店

 花見や夏祭りなど、イベント会場に出店出来ればかなりの売り上げになります。

 各地のイベント情報には常に目を向けておき、キッチンカーで日本中を駆け回るのも戦略としては面白そうです。

 平日の通勤時や買い物時に1人前500円の唐揚げを見ると高いと感じますが、イベント会場なら他の飲食店も高値で販売しているので1人前500円の唐揚げが高く見えません。


まとめ:唐揚げ専門店は工夫しないと苦戦する


 
『結局儲かるのか?』という質問に対する答えは『やや厳しい』と言えます。 


 確かに初期投資や原価は安いので、他の飲食店に比べるとリスクが小さいです。

 しかし、言いかえると参入障壁が低いので儲かると分かると新規参入者が殺到して市場が崩壊します。


 あえて安定性のない唐揚げ専門店を開業するよりも『他の飲食店』の方が成功率が高いと断言します。