キッチンカーの定番『焼き鳥屋』は儲かるのか
タレの焼ける匂いにそそられた方も多いのではないでしょうか。
焼き鳥の市場規模は2000億円ほどあり、日本の国民食と言っても過言ではないでしょう。
そして、焼き鳥の移動販売は、儲かる可能性がある面白いビジネスです。
この記事では、焼き鳥移動販売の平均年収や初期費用、メリット・デメリット、さらに儲けるコツを解説します。
焼き鳥キッチンカーの初期費用
高額なのは車体の取得費用です。
新車を改造する場合は300万円。
既に移動販売車として利用されていた中古車なら100万円ほどで取得できます。
初期費用を低く抑えることがビジネスの成功率を高める重要な要素のため、心機一転新車でビジネスを始めたいと考えることもあると思いますが、中古車を購入し、外回りだけしっかりと綺麗にしておくことがよいでしょう。
多少の内装が破損している程度のことは目をつむる方が取得費用を抑えることが出来ます。
焼き鳥屋に必要な焼き鳥器や小型の冷蔵庫などは、合計20-30万円もあれば、揃えることができるでしょう。
店舗型の場合、安く抑えても500-800万円くらいはかかってしまいますが、移動販売ならその半額以下で始めることが出来ます。
焼き鳥の原価率
焼き鳥の中では、ねぎまが一番『原価率』が高く30%。反対に一番安い物がレバーの10%。それ以外の皮や軟骨などはだいたい20%です。
また、元々串に刺さっているものを仕入れるのと、自分で串打ちする場合とでは若干『原価率』が変わります。
しかし、総じて特別原価が高いものや安いものは無く、飲食店の一般的な『原価率』である30%よりは低く抑えやすい業態です。
食品ロス
それでも焼き鳥の移動販売には見えにくい落とし穴があります。それは食品ロスの多さです。
街で見かける焼き鳥の移動販売車を見ていると、いつでも出来立ての焼き鳥が並んでおり、いつでも香ばしい匂いと煙が立ち込めています。
移動販売では、繁盛感を出すためや匂いで集客するため、注文が無くても焼き鳥を焼いていることが多いです。
勿論、いくつかは作り置きにすることも出来ますが、そのうちの一定数は廃棄されてしまいます。
また、肉という鮮度が重要な食品を扱うため、いくら冷凍していたとしても、長期に渡り保存することは出来ないので、商品の種類を増やしすぎると捌ききれず廃棄となることがあります。
表面上の原価率は確かに30%以下に抑えることが出来ますが、この廃棄分も計算に入れると『原価率』はもう少し大きくなります。
焼き鳥屋の売上と年収
その詳細は、下記の通りです。
・原価30%
・経費20%
・利益50%
よって、年収240万円(月20万円)稼ぎたい場合は、多少余裕を持って月50万円の売上が必要です。
月に25日稼働する場合、2万円/日の売上です。
1本100円なら1日200本。1本150円なら1日133本が目安です。
スーパーの店先で出店する場合なら、主な販売客は主婦で、用途は晩ごはんのおかずや子供のおやつになるでしょう。
ひとりあたりの購入量を5本/人で想定すると、30-40人/日くらいの集客が必要です。
焼き鳥キッチンカーの平均年収
焼き鳥の移動販売もその他と同じように平均年収は、400万~500万円です。
しかしこの数値は、廃業せずに経営を続けられている”エリート”経営者の平均年収なので、その影には儲からずに廃業した経営者が多くいることも忘れてはなりません。
それでも、ビジネスとしてはわりと初期費用の安いキッチンカーで年収400万~500万円になると考えると、割の良いビジネスかもしれません。
焼き鳥キッチンカーのメリット
メリット1:フランチャイズ不要
焼鳥移動販売にフランチャイズは不要です。
FCの最大のメリットは看板(知名度)が使えることです。
『コンビニ』なら、ポプラとセブンイレブンが隣接していた場合、多くの方が馴染みのあるセブンイレブンに入店します。
しかし、焼き鳥の移動販売の場合、セブンイレブンほどの知名度のある企業はありませんし、そもそもスーパーの入り口で販売する場合は、そのスーパーが集客をしてくれるので、看板が必要ありません。
スーパーに集客してもらって、焼き鳥の香りでお客の足を止めるだけでいいので、看板は何でも良いのです。
それ以外にも、FCの魅力として、初期設備の準備や商品の仕入れ、ノウハウなどを提供してくれますが、移動販売のような小規模な形態なら自分で出来ますし、焼き鳥の仕入れは最悪スーパーでも出来ます。
FCに加盟していると、毎月の売り上げのうち数十%を加盟料として支払う必要があるので、FCに加盟しなくてよいことは大きなメリットになります。
メリット2:焼き鳥のセット販売
売上を少しでも上げる工夫として、焼き鳥のセット販売をしている移動販売車もいます。
スーパーの前で販売している場合、主婦が晩御飯のおかずに購入するケースも多いです。
日々献立に悩んでいる主婦にとって、セット販売されている商品は頭を使わずに済むため、ありがたいのです。
例えば、4人分で5種類ずつのセット商品の場合、20本セットで2,000〜3,000円の売上を上げる事ができます。
晩御飯のおかずとしては少し高額のため、1日1セットでも売れれば良いでしょうが、売上の底上げには十分な効果があります。
メリット3:安い初期費用
焼き鳥移動販売の初期費用は、中古車を選んだりして節約すれば200~300万円で始められます。
また、かなり思い切りケチれば100万円前後で始めることも可能です。
『他の飲食店』なら初期費用に1000万円以上かかるのが普通なので、圧倒的に少ない初期費用なことが分かります。
メリット4:安い人件費
そうなると、専門のシェフを雇うか、素人を雇ってしばらく修行させるかの二択になり人件費が高くなります。
よって、焼き鳥屋は素人を雇っても即戦力として使えるので、相対的に人件費が安くなるのです。
メリット5:流行り廃りがない
焼き鳥の歴史は古く、一説には平安時代から食べられていたと言われています。
そして、現代でも日本人なら誰もが一度は食べたことがあるくらいに一般的な料理となっています。
このような長い歴史のある料理には、流行り廃りがなく5年後も10年後も一定の需要があることが容易に想像出来ます。
そういったリスクを考えずに同じ仕事を続けられるのが、焼き鳥屋の魅力なのです。
メリット6:テイクアウト需要の高まり
昨今の情勢により、テイクアウト需要は高まっています。
焼き鳥キッチンカーは、まさにこのテイクアウト専門のお店のため、このトレンドはかなりの追い風になります。
『居酒屋』のようなイートイン専門店の場合は、途中で皿を片付けたりお水を補充したりと、客に対する細かな作業が多いです。
その点で、テイクアウトなら販売時のやり取り以外に客に対する作業はないので、人件費を抑えられるメリットもあります。
焼き鳥キッチンカーのデメリット
デメリット1:販売場所
移動販売のメリットは、簡単に場所を変えることが出来ることです。
しかし、言い換えれば、定住することが難しいです。
安定した売り上げを上げやすいのは、大型スーパーの駐車場ですが、競争も激しいので、参入するにはスーパーの店長を口説く営業力も必要です。
また、イベント会場での販売は、売り上げが上がりやすいですが継続性がなく、次々にイベント会場をはしごする必要があります。
よって、開催されるイベントの調査や、主催者への営業などの雑務に追われます。
デメリット2:差別化が出来ない
他の商材なら、味付けや見た目で差別化を図ることが出来ますが、焼き鳥に差別化戦略はほぼありません。
例えば、『ラーメン屋』なら同じ豚骨ラーメンでもお店ごとに麺やスープの味はまったく違います。
『クレープ屋』なら同じメニューでもお店ごとにかなり見た目が違います。
このような差別化を焼き鳥屋で行うのは難しいです。
よって、焼き鳥屋で近隣にライバル店があったとしても、価格競争くらいしか打てる手がありません。
デメリット3:参入障壁が低い
移動販売の中でも、焼き鳥は技術が必要なく初期費用も安く済むため、ライバルが誕生しやすいです。
そして、先程述べた通り差別化が出来ない以上、価格競争に巻き込まれることになるでしょう。
そうならないためには、接客に力を入れて常連客を増やしたり、同じ味でも安く仕入れられる食材がないか探すなど、普段の営業を戦略的に行う必要があります。
デメリット4:熱中症のリスク
狭い車内で永遠と串を焼き続けるキッチンカーの焼き鳥屋は、熱中症のリスクを常に抱えています。
特に真夏の昼間に営業をする場合は注意していても熱中症になるので、体の弱い方は真夏の営業は控えましょう。
デメリット5:天候の影響
キッチンカーの最大の敵は天候です。
少し考えれば分かることですが、傘を差して雨に濡れながら焼き鳥を注文するのは気が引けます。
雨の日に焼き鳥を売るのは至難の業なので、出店箇所との契約内容にもよりますが、雨の日には休業する方が良いです。
どうしても雨の日に出店しなければならない場合は、晴れの日に比べてほとんど客が来ないので、在庫量や廃棄量に気をつけましょう。
焼き鳥キッチンカーのコツ
コツ1:初期費用を抑える
焼き鳥のキッチンカーは手軽に始められる分、急激にライバルが増えて経営が傾くこともあります。
そのリスクを考えるのならば、出来るだけ初期費用を抑えて開業して、いつでも別のお店に転向出来るように資金を残しておきたいです。
中古で揃えるのならば100万円以下で始められるので、中古で一式揃えることをおすすめします。
コツ2:出店場所の吟味
気軽に出店場所を変えられるキッチンカーだからこそ、出店場所は吟味しましょう。
毎日同じスーパーに出店する契約をすると、仮にそのスーパーなら出店を断られた時に一気に収入が無くなります。
それよりも2~3箇所のスーパーにローテーションで出店する方が出店を断られた時のリスクは少なくなります。
また、週末に花見や夏祭りなどのイベント会場に出店すると、平日とは別次元に稼げるのでイベント会場の新規開拓を積極的に行いましょう。
コツ3:客単価を意識
キッチンカーの集客力は、出店箇所による影響を強く受けるので、出店箇所を工夫したり外観を工夫したりとやれる施策は少ないです。
一方の客単価は、焼き鳥屋側の工夫次第でかなり変わるので、集客力を高めるよりも客単価を高める工夫をする方が建設的です。
仮に1日80人訪れるキッチンカーで客単価を100円上げることが出来れば、売り上げが8,000円も増えます。
セットメニューを載せたり、商品のレパートリーを増やしたり、適正な価格改定を行うことで1円でも客単価を上げる努力を行いましょう。
コツ4:積極的な営業
スーパーにやってくる主婦の大半は、スーパーに入ってから夕食のメニューを決めています。
つまり、スーパーに入る直前に考えていることは、『夕食は何にしよう。』です。
このような曖昧な思考の状態で、スーパーの店先にある焼き鳥屋が声をかけてきたら、10人中2~3人は『夕飯を焼き鳥にするのはありか。』と考えるはずです。
仮に声をかけた人のうち、10人に1人しか焼き鳥を買ってくれなくても、それを100人に行えば10人も客を増やせます。
労力をかけるだけでタダで出来る施策なので、特に資金力のない開業初期にはおすすめの戦略です。
コツ5:普通の焼き鳥
夢や情熱を持っている人ほど、自分の求める味を追求しがちです。
しかし、焼き鳥は既に完成されている料理なので、レシピ通りに作ることが一番です。
購入者も普通の焼き鳥を頭にイメージしながら食べるので、もしそのイメージと目の前の焼き鳥の味が違い過ぎると『不味い。』と感じる可能性が高いです。
あまり奇抜な焼き鳥を作るのではなく、王道の焼き鳥を作りましょう。
コツ6:清潔感への配慮
キッチンカーは普段から街中を走るので、ホコリや泥が付着しています。
また、焼き鳥を調理すれば油汚れがあちらこちらに付きます。
これらを放置したまま営業するのはおすすめしません。
焼き鳥屋に訪れる人の半数以上は女性です。
カップルでも女性が財布の紐を握っていることが多いのではないでしょうか。
また、女性は男性よりも綺麗好きな人が多く、汚いお店の食べ物を食べたいとは感じません。
毎回の営業前には、しっかりと車全体の清掃を行い、営業中も時間が空いたタイミングで清掃を行いましょう。
最大のライバルは『やきとり竜鳳』
移動販売で焼き鳥を販売するときに強力なライバルとなるのが、FC(フランチャイズ)店の存在です。
FC契約をしている移動販売車は、どれも同じ外観をしており同じメニューを販売しているので、顧客からすると大手のコンビニやファミレスに入るような安心感があります。
やきとり竜鳳
赤い車両が特徴で全国に500店舗以上存在する、焼き鳥移動販売の最王手がやきとり竜鳳(りゅうほう)です。
全国で500台以上が毎日街中を走っているので、一度は見たことがある人が多いでしょう。
単純計算で1県あたり10台以上のやきとり竜鳳がスーパーの駐車場やイベント会場に出没しているので、競合してしまうことも起こりえます。
メニューは豊富ですが、価格は1本あたり180円程とやや高いので、価格を変更出来ないチェーン店のデメリットを利用して、ここより全品10円ずつ安い価格設定にするのも面白そうです。
まとめ:1日200本焼き鳥を売ろう!!
その分、ライバルが定期的に生まれてきますが、そのライバルも素人のことが多いので、誠実に仕事をしていれば、いずれ淘汰されるでしょう。
1日200本売れる自信があれば、焼き鳥ビジネスで勝負してみるのはいかがでしょうか。
また、当サイトでは『様々な飲食店』を紹介しています。あわせて参考にしてください。