トルコリラが下がる理由
しかし、高い政策金利とは対象的に為替相場は下落の一途を辿っており、この10年だけで見ても、1リラ約40円から1リラ約8円へと暴落をしています。
トルコリラの為替相場が綺麗な右肩下がりを続けている理由はいくつかありますが、最大の原因はエルドアン大統領の独自の金融政策です。
この記事では、そんな金融政策を中心にトルコリラが下がり続けている理由を解説します。
トルコリラが下がる理由1:大統領の金融政策
トルコリラ相場が下落し続けている最大の原因はエルドアン大統領が提唱する独自の金融理論です。
トルコリラが下がる理由1−1:独自の金融理論
トルコは長年高インフレに悩まされています。
インフレとは、物の値段が上がることで、相対的に通貨の価値が下がることです。
例えば、去年100円だったりんごが今年120円で販売されていると、インフレ率+20%と表現します。国内経済が徐々に発展していくには、+2〜3%程度のインフレが良いとされています。
トルコのインフレ率は、2010年代前半まではおおむね1桁%で抑えられていましたが、2017年から二桁%になり、2022年には70〜80%のインフレ率になることが見込まれています。
世界的なスタンダードでは、このような高インフレには高金利政策で対処することが良いとされていますが、エルドアン大統領は、むしろ反対に低金利政策を行うことでインフレ率が下がると提唱し、実際に低金利政策を施行しています。
2014年に大統領に就任した当初は、市場もまだエルドアン大統領の金融政策を様子見しているような印象もありましたが、今年のインフレ率を見ると市場に完全に見限られたように感じます。
トルコリラが下がる理由1−2:強力な権力
本来、大統領がこのような思想を持っていたとしても、金融政策を決めるのは中央銀行総裁のため、実際に暴走することは出来ません。
しかし、エルドアン大統領は、自分の意に背く総裁を更迭し続けており、実質的に金融政策も牛耳っています。
独裁的であると批判されがちなロシアのプーチン大統領ですら、中央銀行の独立性を大切にしており、金融政策には口出しをしていないことを考えると、いかにトルコの金融市場が異質かが分かるでしょう。
トルコリラが下がる理由2:実質金利がマイナス
トルコ中央銀行は、2022年11月にさらなる利下げを実施し、ついに政策金利は9.0%になりました。
一見すると9%という金利は高金利に見え、日本の個人投資家がトルコリラに投資をするのも頷けますが、トルコのインフレ率は70-80%です。
この状態で1年間トルコリラを保有した場合、元本に対して9%の金利が付く代わりに、通貨の価値が70%下落していることになります。
このような考え方を実質金利と呼び、先程の例なら、『ー70%+9%=ー61%』が実質金利となります。
たしかに、インフレ率がそのまま通貨価値の下落とイコールにはなりませんが、あまりに分の悪い賭けであることは間違いありません。
トルコリラが下がる理由3:米国金利の上昇
外部要因として、アメリカの政策金利の上昇もトルコリラ安の要因になっています。
世界中の企業や投資家にとって、一番価値のある通貨は、世界一の経済力があり基軸通貨となっているアメリカドルです。
それでもトルコリラを保有したいと考える人がいるのは、トルコリラの方がアメリカドルより政策金利が高く金利収入が期待出来るからです。
つまり、アメリカの政策金利とトルコの政策金利の差が大きいほど、トルコリラを保有したい人が増えるのです。
しかし、ご存知の通りアメリカは長いゼロ金利から脱し、連続的な利上げで政策金利を高めています。
そして、先程お伝えした通りトルコは連続的な利下げで政策金利を下げています。
両者の金利差が急速に小さくなったことで、トルコリラの魅力が急激に失われてしまいました。
まとめ:トルコリラはこれから先も下落し続ける
それはトルコリラの長期チャートが右肩下がりになっていることから想像出来ることです。
私自身トルコリラの高金利は魅力的ですし、暴落し続けているということは割安であるとも言えるので、いつかは投資をしているかもしれません。それでも、エルドアン大統領が現役の間はそれはないでしょう。
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