弁当屋は儲かるのか?


 弁当屋は営業の仕方次第では、大きく儲けられるビジネスです。


 一般的な『原価率』30%程度のお弁当なら、1日80~100食くらい売り上げれば月30~50万円くらいの生活が出来るでしょう。


 しかし、普通に営業しているだけでは、そのノルマを達成することは出来ません。

 そこでこの記事では、弁当屋の平均年収や初期費用、メリット・デメリット、さらに儲けるコツを解説します。


弁当屋の年収


 弁当屋の平均年収は300~400万円です。


 仮に1食700円(『原価率』30%)の弁当を1日100食販売すると、1日の売り上げは7万円

 月25日稼動なら月の売り上げは175万円

 年間2100万円の売り上げになります。


 利益率が売り上げの15%なら年収が315万円になる計算です。


 他にも、お茶や味噌汁などのサイドメニューも合わせて販売していけば、十分に生活していくだけの収入になるでしょう。


弁当屋の初期費用

 弁当屋の初期費用は300万円です。

 イートインスペースが必要な『うどん屋』や『カレー屋』のような普通の飲食店なら、広い敷地が必要になるので初期費用が1000万円以上になります。

 それと比べると、テイクアウト専門の弁当屋は狭い敷地で良いので、初期費用や毎月の維持費が安くなります。


弁当屋のメリット


メリット1:ピーク時に大量に捌ける

 『他の飲食店』の場合は、注文を受けてから料理を作るため、1時間あたりに捌ける客数に限界があります。

 これは、ランチタイムとディナータイムに需要が集中する飲食業界にとっては大きなデメリットになっています。


 その点、お弁当なら事前に作っておくことで、ピーク時でも大量の客の注文を捌けます

 需要さえあれば、1時間に100個の弁当を売ることも不可能ではありません。 


メリット2:家賃が安く済む

 弁当屋は『他の飲食店』と違いイートインコーナーを設ける必要がないので、キッチンと販売スペースさえあれば開業出来ます。

 スペースが少ない分だけ賃料も安くなりますし、他の飲食店が見向きもしない不人気物件や都心の小スペース物件を借りる選択肢が取れます。


 10坪以下の土地なら、東京の一等地でも月々の賃料が10万円以下の物件もあります。

 地方なら人通りの多い街中でも5万円以下の物件もあります。


 これが『他の飲食店』なら、都心で月々50~100万円、地方でも月々30~50万円するのが普通です。


メリット3:常連客が週5で通ってくれる

 『ラーメン屋』で常連客を作っても、毎日ラーメンを食べる人はほとんどおらず、よくて週に1,2回来てくれるくらいにしかなりません。


 しかしお弁当屋なら、毎日違う物を食べられるので、常連になれば週5回通ってくれるようになるかもしれません。

 1回700円で週5回通ってくれる常連さんが一人いるだけで、月の売り上げが14,000円も増えます。


 単純計算で『ラーメン屋』に比べて1/3程度の常連客数で済み、経営が安定しやすくなります。


メリット4:食費がゼロになる

 『ラーメン屋』や『たこ焼き屋』を経営している人も売れ残りや賄いで食費を浮かせることはあります。

 それがお弁当屋なら、毎日違うおかずを持ち帰ることが出来るので、食費を限りなくゼロにすることも容易です。


 また、毎日自分のお弁当を食べることで、常連客の気持ちを知れることも大きなメリットです。


メリット4:メニュー数

 弁当屋にはメニューの縛りがないため、メニュー数を好きなだけ増やせます。


 『ラーメン屋』ならラーメンや餃子やチャーハン、『そば屋』ならそばや天ぷらやおにぎりなど、普通はお店によってメニューに制約があります。

 しかし、弁当屋は『唐揚げ』を販売しても良いですし、『カレー』をメニューに加えても良いわけです。


 このようにメニューに制約がないので、世界中の食べ物から売れやすいメニューや利益率の高いメニューなどを自由にカスタマイズしたメニュー作りが出来ます。


メリット5:季節性がない

 『かき氷屋』が夏にしか売れず、『焼き芋屋』が秋から冬にしか売れないように、特定の季節にしか売れない商品はたくさんあります。

 それほど極端でなくても、多かれ少なかれほとんどの飲食店は季節によって売り上げが変わります。


 一方で弁当屋は、毎日通うようなお店なので季節の影響を受けにくいだけでなく、季節ごとにメニューを変えられるので、季節ごとの売り上げが一定になりやすいです。


弁当屋のデメリット


デメリット1:コンビニがライバル

 お弁当屋の最大のライバルは『コンビニ』です。


 『コンビニ』ならいつでも馴染みの味を楽しめますし、飲み物やお菓子など他の買い物もついでに出来る便利さがあります。

 ただし、『コンビニ』の弁当は工場生産のため、『手作り』や『出来立て』をアピールすれば十分に差別化になるでしょう。


 様々な工夫をして『コンビニ』と競合しないようにしましょう。


デメリット2:冷凍宅食弁当の普及

 『コンビニ』と同じくお弁当屋のライバルになるのが、近年普及してきた冷凍宅食弁当です。


 『ナッシュ』や『ワタミの宅食』が有名ですが、最近は『ライザップ』や『ベネッセ』も宅食業界に進出しており、価格競争が激しくなっています。

 毎日自宅の冷凍庫からその日に食べたいお弁当を会社に持っていけば、忙しい休憩時に外に出ずに弁当が食べられるので、重宝されています。


 まだまだコンビニ弁当や弁当屋の弁当と比べると冷凍食品は質が低く価格も高いです。

 しかし、さらに技術発展が進んでいけば、質や価格の差は埋まっていくでしょう。


デメリット3:廃棄が多い

 作り置きが必須なお弁当屋は、注文を受けてから作るお店と比べて、廃棄ロスが多くなります。

 コンビニ弁当のように食品添加物が入っていれば丸一日は消費期限が持ちますが、手作りのお弁当では半日が限度でしょう。

 毎日の売上量の把握や曜日ごとの客の推移など、あらゆるデータを取っておき、少しでもロスを生まないように努めましょう。


 ここで気を付けておきたいのは、"閉店間際の値下げ"です。

 廃棄ロスを減らす目的で閉店前に値下げをしているお店も多いですが、毎回値下げをしているとそれを目当てに値下げされるまで買わない客が一定数生まれます。

 そうなると、本来の定価が割高に感じられるようになっていき、値引きしないとお弁当が売れなくなります。


デメリット4:調理スキルが求められる

 『ラーメン屋』や『たこ焼き屋』のように一つの商品を作るだけなら、すぐにそれなりの品質の商品を作れますが、お弁当屋さんに求められるのは主婦レベルの調理スキルです。

 揚げ物や煮物、卵焼きなど定番の家庭料理はすべて作れるようにしたいです。

 また、家庭の味と比較されてしまうので、高い調理スキルがないと繁盛店にはならないでしょう。


デメリット5:食中毒

 弁当屋は、作り方が一つ一つ違うおかずを複数種類作ることになるので、単体のメニューだけを作ることに比べて衛生管理の徹底が難しいです。

 また、イートインの飲食店ならその場で食べてくれますが、弁当は購入後すぐに食べる人もいれば1~2時間後に食べる人もいます。

 そういった観点から、普通の飲食店よりも食中毒を起こしてしまう確率は高いと言えます。


 『コンビニ』の弁当にはたくさんの食品添加物が入っており、多少常温で放置しても食中毒になることはありませんが、弁当屋の手作り弁当には保存料が使えません。


 一度食中毒を引き起こしてしまえば、営業停止になるだけでなく信頼も失ってしまうので、ほぼ確実にお店を廃業することになります。

 そうならないためにも、製造段階で余分な菌を付着させないように、店内の清掃や食材の管理には細心の注意を払いましょう。


弁当屋で稼ぐコツ


コツ1:事務所や介護施設へ売り込む

 営業力が必要になりますが、会社員の多い事務所や入居者の多い介護施設に売り込めば、毎日一定の売上を確保出来ます。

 また、事前に注文数が分かっているので、廃棄ロスがほぼ無いのもメリットです。


 多くの人がやらないことなので意外にブルーオーシャンで、何箇所か回れば確実に契約が取れるでしょう。


コツ2:ターゲットを明確にする

 男性客女性客で求められる弁当の種類は大きく変わります。

 また、住宅街オフィス街でも需要のある弁当は違うでしょう。


 ターゲット層を明確にして、その客層に刺さるメニュー開発をすることが売上アップには不可欠です。


コツ3:定休日以外毎日営業する

 会社員にとって、ランチの時間は限られています。

 そんな中で、お弁当屋さんが時々急に休む日があると、最悪昼食を食べそこねる可能性があります。

 そんなリスクを負ってまでわざわざそのお店の常連になりたい人はいません。


 気まぐれで急に安んだりせずに毎日決まった時間に開店し、客に安心感を与え常連客を増やしていきましょう。


コツ4:常連客を飽きさせない

 常連客が増えてくると売上が安定しますが、いつまでもその店の常連であり続ける保証はありません。


 お弁当屋の常連客が突然通うのを止めてしまう原因は、メニューへの"飽き"です。

 毎日同じメニューだけにするのではなく、日替わりメニューや季節メニューも取り入れて、"変わらない味"と"新しい味"を提供していきましょう。


コツ5:気温や天気に気を配る

 寒い季節には温かいものが、暑い日にはさっぱりしたものが売れるのは周知の事実です。

 毎日の気温や天気をしっかりと把握して、売れる商品を予測し製造すれば、売上アップに繋がりますし、フードロスも減らせるでしょう。


コツ6:レジ袋有料化への配慮

 お弁当屋さんは、ランチ時の忙しい時間に大量の注文を捌きます。

 すべて500円で販売すれば、お金の受け渡しが簡単ですが、1円単位の価格設定をしていると、お金の受け渡しが面倒くさいと思われます。


 そこで多くのお弁当屋さんでは、500円のワンコインで多くのメニューを販売していましたが、近年ではレジ袋有料がネックになっています。

 そこで、仕入れコストは増加しますが、有料にしなくてよい紙袋やバイオマス素材のレジ袋を使い、レジ袋代をタダにするのも効果的です。


売れる弁当メニュー


 お弁当屋チェーン店の売上ランキングでは、これらのメニューが人気です。


お弁当チェーン店の人気メニュー
・のり弁当
・唐揚げ弁当
・野菜炒め弁当
・チキン南蛮弁当
・カレーライス
・カツ丼


 どちらかと言えば男性客の方がお弁当屋を利用することが多く、男性向けのガッツリ系メニューが人気のようです。

 これら以外に、健康志向の方や女性向けに野菜を多く使ったメニューや、アレルギーの方用のメニュー、お味噌汁やサラダなどのサイドメニューを合わせていくと、バランスの良いメニュー表が出来上がるでしょう。


まとめ:営業力があれば弁当屋も儲かる


 普通に店頭に弁当を並べるだけでは、多くの弁当屋や『コンビニ』に負けて長く経営するのは難しいでしょう。

 事務所や介護施設など、人が多い所に宅配することで、安定的な売上を確保出来、最初にあげた1日80~100食のノルマを超えるようになります。


 それ以外にも経営者としての自覚を持ち、その日にどの種類をいくつ作るか、新たに開拓出来る営業先は無いか、経費削減出来る所はないか、などあらゆる事象に意識と思考を向けましょう。


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