大玉トマト農家は儲からない?


 ネットの書き込みを見ると、『大玉トマト農家は儲からない』と言われています。

 しかし、実際には野菜の中では比較的儲かりやすい作物の一つです。

 大玉トマトと『ミニトマト』を比べると『ミニトマト』の方が儲けやすいので、こうした噂が広まっているものと考えられます。


 この記事では、大玉トマト農家の年収や、メリット・デメリット、さらに儲けるコツを解説します。


大玉トマト農家の年収


 大玉トマト農家の平均年収は、450万円です。

 農業全体の平均年収が300万円であることを考えると、大玉トマト農業は儲かる農業であると言えます。

 時給換算で見ても『ホウレンソウ』や『玉ねぎ』が最低賃金を割っている中で、大玉トマト農家の平均時給1,300円とかなり高額です。


 また、初期費用こそ高額ですが、一般的に施設栽培の方が露地栽培よりも時給や年収が高くなるのが普通です。

 さらに高時給・高収入を目指したい人は、ハウス栽培を検討すると良いでしょう。


大玉トマト農家の初期費用


 大玉トマト農家の初期費用は、露地栽培か施設栽培かによって大きく変わります。


 露地栽培なら150~300万円

 施設栽培なら500~1000万円が初期費用として必要です。


 ハウスを建てるには、1棟あたり500万円はかかるので、施設栽培の初期費用は高額です。

 その他には、畑の取得費用や苗の購入費用などがかかります。


大玉トマト農家のメリット


メリット1:露地栽培でも稼げる

 あまり稼げない露地栽培の中でも、大玉トマトなら生活していけるだけの収入を得られます。

 露地栽培でも年収300万円以上を目指せますし、施設栽培と違い燃料費代高騰の影響を受けないので、安定的な収入を得ることが出来ます。 


 ただ、やはり施設栽培の方が高年収になりやすいので、最初は露地栽培から始めて経営が軌道に乗ってから施設栽培に移行していくのがおすすめです。

 実際に、全国の大玉トマトのうち70%以上は施設栽培で生産されています


メリット2:高い需要が見込める

 大玉トマトは、江戸時代の1700年頃に日本にやってきた野菜で、それから長く日本人に親しまれています。

 現代でも、国内の野菜消費量ランキングでトマトは常にトップ10入りをしています。

 『アスパラ』や『オクラ』のような需要も供給も少ない作物は、時代の流れや天候の変化で大きく需要や価格が変わってしまう可能性がありますが、大玉トマトについてはこれから先も長く安定的に稼げるでしょう。


メリット3:高時給

 大玉トマト農家の労働生産性は高く、時給に換算して1,300円です。

 中には、時給2,000円とも言われている『キャベツ農家』のような例外はありますが、最低時給を割ることも多い農業において大玉トマトの時給の高さは魅力的です。

 また、施設栽培やブランド化を行えば、さらに高時給を目指すことも難しくありません。


メリット4:所得率

 売り上げに対する所得の割合が所得率です。

 大玉トマトの所得率は36%で、これは農業全体で見てもかなり高い数値です。

 参考として、『レタス』や『大根』の所得率は20%。『玉ねぎ』に関してはわずか8%です。


メリット5:狭い土地

 大玉トマトは、一つの苗から30~50個ほど収穫出来ます。

 大玉トマトは1つあたり40~50円ほどの卸売価格なので、1つの苗で1,000~2,000円分の売り上げが見込めます。


 このように、大玉トマトは1つの苗からたくさんの実が成るので、他の作物に比べて狭い敷地でも高い収入を目指せます。


大玉トマト農家のデメリット


デメリット1:ミニトマトの方が儲かりやすい

 大玉トマトも稼げる野菜ですが、『ミニトマト』の方がさらに儲かりやすいです。

 稼ぐことだけを考えるのならミニトマトの方が良いかもしれません。

 また、『ミニトマト』と大玉トマトを両方栽培する経営方法もありです。


デメリット2:施設栽培は収支管理に注意

 ハウスで大玉トマトを育てる施設栽培は露地栽培に比べて大きく稼げますが、売り上げに対する燃料費の割合が高くしっかりと計算しておかなければ赤字経営になることもあります。

 また、建設にも多額の費用がかかるので、気軽に廃業も出ません。


 まずは露地栽培から始めて、大玉トマト栽培に慣れて来た頃にハウスを建設して施設栽培へシフトしていく経営方法がおすすめです。


デメリット3:連作障害になりやすい

 大玉トマトは、土の中の養分をたくさん吸収して、大きくて栄養価の高い実を作ります。

 それにより、毎年同じ畑で大玉トマトを作り続けると、土の中の養分のバランスなどが崩れてきて、作物が病気になりやすくなる連作障害という症状が起こりやすいです。


 連作障害を防ぐもっとも簡単な方法は、畑を複数用意しておき年毎に別の畑で大玉トマトを栽培する"輪作"です。

 その他の方法として、相性の良い"コンパニオンプランツ"の『ネギ』類を植えて、地中の養分のバランスを調整する方法もあります。


デメリット4:出荷時期は無休

 トマトは、1日収穫が遅れるだけでも実が裂けたり変形するため、収穫時期は毎日出荷作業を行います。

 収穫から選別、袋詰などを行うと、毎日長時間労働になってしまいます。


 短期のアルバイトを雇うか、出荷時期の異なる品種のトマトを組み合わせて、労働時間の調整を行うと良いでしょう。


大玉トマト農家のコツ


コツ1:ハウス栽培

 やはり本格的に大玉トマト農家として生活していくことを考えるならハウス栽培に挑戦するべきでしょう。

 露地栽培に比べて理想的な大玉トマトが作れるので、職人気質の人なら楽しんで仕事に取り組めます。


 ハウスの建設費用暖房代などの経費が多くかかりますが、高品質な大玉トマトがたくさん作れるようになるので、上手く経営すれば収入がさらに上がります


コツ2:ブランド化

 大玉トマトはブランド化が進んでいる野菜です。

 "桃太郎"や"アメーラ"など、スーパーに並んでいる大玉トマトを良く見ると様々なブランドトマトがあることが分かります。


 普通のトマトが1つ100円以下で売られている中で、ブランドトマトは1つ500円以上で売られているものもあります。

 ブランドトマトの方が手間や燃料代が多くかかりますが、それ以上の稼ぎを得られる可能性も高いです。


工夫3:若者は甘いトマトが好き

 ブランドトマトが高い糖度を売りにしているように、甘いトマトは若者を中心に人気です。

 それではトマトは甘ければ甘いほどよいのかというとそうではありません。


 高齢者の間では、昔から食べ慣れている酸っぱいトマトが好まれています。

 また、料理によっては甘いトマトよりも酸っぱいトマトの方が合う場合もあります。


 このように、年齢や用途によって好まれる大玉トマトの種類も異なるので、複数の種類の大玉トマトを栽培するのも良いでしょう。


コツ4:日射量と排水性

 トマトの原産地は南米で、暖かい気候で多くの日光を浴びることで肉厚で美味しいトマトになります。

 よって、日本国内で栽培する場合でも日光が良く当たる畑を用意しましょう。


 また、トマトは地中深くまで根付くので、排水性の高い土地との相性が良いです。


 大玉トマトを収入の柱にするのなら、日光が良く当たり水はけの良い土地で農業を始めると良いでしょう。


コツ5:剪定作業

 剪定とは不要な枝葉などを取り除くことを指します。


 不要な葉や枝が多いと、そちらに栄養が多く使われてしまい、大玉トマトの実に十分な栄養が回らなくなります。

 時期により、不要なわき芽、幹の先端、実、葉を取り除くと、商品となる大玉トマトの実に十分な栄養が行き渡り高品質な商品になります。


 大玉トマトは、10a(アール)あたりおよそ2,000本の苗を植えるので、そのすべてを剪定していくのは膨大な作業量になりますが、その分だけ美味しく高単価な大玉トマトになります。



まとめ:大玉トマトは露地栽培でも稼げる


 大玉トマトは露地栽培でも施設栽培でも稼げる農業の優等生です。

 最初は露地栽培から初めて1棟ずつハウスを立てていき、徐々に大規模農家にジョブチェンジしたり、高単価のブランドトマトに挑戦するのも面白そうです。


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