ピザ屋オーナーは儲からない?


 ピザ屋は、宅配ピザがライバルにはなりますが、お店で本格的なピザが食べられるお店はそれほど多くなく、腕に自信があれば稼ぎやすいビジネスです。

 また参入障壁が高く、『唐揚げ屋』のように乱立することがないのも魅力です。


 ただし、専用の窯が必要なため、初期費用が高額になりがちなデメリットがあります。


 この記事では、ピザ屋の平均年収や初期費用、メリット・デメリット、さらに儲けるコツを解説します。


ピザ屋オーナーの年収


 ピザ屋オーナーの平均年収は500万円です。

 ピザは、儲かりやすい"粉もの"ではありますが、乗せる具材によっては原価も高くなります。

 しかしその『原価率』は20~30%となっており、一般的な飲食店の『原価率』が30%であることを考えると、比較的儲かりやすいビジネスであると言えるでしょう。


ピザ屋オーナーの初期費用


 ピザ屋を始めるのに必要な初期費用は1250~2050万円です。

 普通の飲食店と同じ設備の他にピザ窯が100~500万円と高額なため、全体的な初期費用も『他の飲食店』と比べると高めです。

 しかし、イートインスペースを設けずテイクアウト専門店として開業するなら、500万円程で開業することも可能です。


ピザ屋のメリット


メリット1:ライバルが少ない

 ピザ屋はライバルの少ない業界です。

 飲食店を始めようと考える人に人気の『ラーメン屋』や『そば屋』や『うどん屋』と、ピザ屋の店舗数を比較するとこのようになります。


全国の店舗数(タウンページ掲載数)
・ラーメン屋 24,257件
・そば屋   18,833件
・うどん屋  17,862件
・ピザ屋   3,644件


 なんと、ピザ屋は『ラーメン屋』の約7分の1、『そば屋』や『うどん屋』の約5分の1しかお店がありません。

 ライバルの少ないピザ屋は、価格競争に巻き込まれにくく客の取り合いになることも少ないといえます。


メリット2:高級なイメージが定着している

 ありがたいことに、日本で宅配ピザが覇権を握っているおかげで、『ピザは1枚2,000~3,000円の高級品』、『ピザは特別な時に食べるもの』というイメージが日本人に定着しています。

 よって、宅配をしない実店舗型のお店でも、1枚3,000円で販売してもそれほど違和感を持たれません。


 このメリットを生かすためにも、『500円ピザ』のような安易な低価格戦略は取るべきではありません。


メリット3:市場規模の拡大

 日本国内におけるピザの市場規模は毎年1~2%ずつ大きくなっており、10年前と比べると1.2倍ほど拡大しています。

 ピザの市場規模が拡大している要因として、"食の欧米化"とコロナ自粛による宅配業界全体の発展が挙げられます。

 普段ピザを食べない人の中にも久々に宅配でピザを食べたという人も一定数おり、そこから冷凍のピザや外食のピザへと波及していきました。


メリット4:ブーム性がない

 日本にピザが普及したのは戦後の1950年代で、それから100年も経たずに国民食になるほど急速に日本中に広まりました。

 そんなピザも現在では当たり前のように日本に広まっているので、流行に惑わされることなく安定的に稼げる商材です。


 話題性の強い商材としては『タピオカ』が有名ですが、ブームとなると一気に店舗数が増えて既存のお店を淘汰して、ブームが去ると一気に閉店していきました。

 まるで、農作物を荒らす"イナゴ"のようなこうした動きは、『タピオカ』だけでなく流行性の高い商材では必ず起こります。


 ピザ屋のような流行に左右されない業界は、こうしたリスクを負わずに安定的に稼げます。


メリット5:参入障壁が高い

 ピザ屋は、高額なピザ窯を用意しなければならず初期費用が高額で、ピザを作るのにはそれなりの調理スキルが必要なため、参入障壁が高い業界です。

 参入障壁が高いと聞くとデメリットのように聞こえますが、簡単にライバルが増えないというメリットにもなります。


 分かりやすい例としてコロナ自粛下の外食業界は、急激に売り上げを落として廃業の瀬戸際に立たされました。

 その時に多くの飲食店が取った行動が、既存の厨房設備をそのまま使え調理スキルもほとんど必要のない、『唐揚げ』への参入でした。

 結果はご存知の通り、既存の『唐揚げ屋』も新規参入した『唐揚げ屋』も共倒れしてブームの終了となりました。


 このように参入障壁が低い商材は、『他の飲食店』も参入してくるリスクがありますが、専用のピザ窯と調理スキルが必要なピザ屋がそうなることはほぼないと言えるでしょう。


メリット6:テイクアウトに対応

 ピザ屋はテイクアウトにも対応可能です。

 冒頭に挙げた『ラーメン屋』、『そば屋』、『うどん屋』は、どれも出汁やスープがあることや麺が伸びることもあり、テイクアウトに対応していないお店がほとんどです。


 当たり前のことですが、テイクアウトしたい客がお店を選ぶ際には、テイクアウト可能なお店から選ぶことになります。

 『ラーメン屋』などはその時点で候補から外れてくれるので、例え自店舗の隣に『ラーメン屋』があったとしても、テイクアウト客からすればライバル店舗にはなりません。


ピザ屋のデメリット


デメリット1:初期費用が高い

 ピザ屋を開業するにあたり高額となるのはピザ窯です。

 一般的な飲食店の開業資金にプラスして、ピザ窯の設置費用もかかります。


ピザ屋の初期費用
・物件取得費(家賃の10ヶ月分)250~350万円
・改装費 500~800万円
・厨房設備費 200万円
・ピザ窯費 100~500万円
・その他備品費 200万円
・合計 1,250~2,050万円

 一般的な飲食店よりも100万円以上初期費用が高くなってしまうので、より一層資金力がないと始められません。


デメリット2:提供に時間がかかる

 ピザは注文を受けてからトッピングをして焼き上げていくので、どうしても提供までに時間がかかります。

 また、窯も1つしかない店舗が大半のため、短時間に大量の注文を受けても処理出来ません。


 よって、おのずと回転率が下がるので、店舗全体の収益が少なくなってしまいます。

 回転率にこだわった『いきなりステーキ』が一世を風靡したことを考えても、提供に時間がかかる点は大きなデメリットになります。


デメリット3:高い調理スキルが求められる

 ピザは、生地作りから焼き上げまで他の料理とは少し違った作業が多く、素人が簡単に作れるものではありません。

 また、イタリアンレストランとしてピザの他に『パスタ』を提供する場合もあります。

 『パスタ』も麺と具材の和え方一つでも味が大きく変わってしまうので、多少の練習が必要です。

 このように、ピザ屋の厨房には高い調理スキルを持った人員を配置しなければならず、自分の代役をアルバイトに任せるのは不可能です。


デメリット4:差別化が難しい

 『ラーメン屋』ならスープや麺の細かな調整やトッピングで差別化を図りやすいですが、ピザはあまり差別化出来る部分がありません。

 つまり、"二郎系ラーメン"のような特徴的なメニューで戦えないので、シンプルにピザの質や美味しさで勝負をしなければなりません。


デメリット5:リピーターを作りにくい

 ピザは高単価な商品であり毎週通える人は稀で、特にお祝いごとのある日に食べられることが多いです。

 また、かなりこってりしているので、一度食べるとしばらく食べなくても良いと感じられがちです。

 そのような背景から、リピーターになる人は『他の飲食店』に比べて少なく、いかに一度の来客でファンになってもらうかがピザ屋にとって重要になります。


ピザ屋の儲けるコツ


コツ1:修行は不要

 ピザの本場と言えばイタリアですが、イタリアのピザと日本で好まれているピザは違うので、わざわざ大金をかけてイタリアへ修行の旅に出る必要はありません。

 また、日本国内で修行をする手もありますが、開業資金を貯めるついでにピザ屋で働くくらいでちょうど良いでしょう。


 修行目的で働いていても、掃除や雑用などピザを作る以外の仕事が多く割り当てられ効率が悪いので、特に修行をする必要はありません。


コツ2:サイドメニューで利益率アップ

 宅配ピザがジュース無料のクーポン券を乱発していることもあり、『ピザにはジュースが必須である』と考える顧客も多いです。

 その他にも、サラダポテトなどサイドメニューを充実させることで、客単価や利益率がアップします。

 ちなみに、ジュースの原価率5~10%ポテトの原価率10~15%でどちらもお店にとって"美味しい"商品です。

 これを上手く利用しているお店を皆さんは知っています。そう、あのマクドナルドです。


コツ3:価格設定は慎重に

コツ3−1:宅配ピザの価格

 『ピザと言えば宅配ピザ

 そう考える日本人が大部分を占めるでしょう。

 実際に、宅配ピザ大手3社の店舗数は、このようになっています。


大手ピザ屋の店舗数
・ドミノ・ピザ 約900店舗
・ピザーラ 約500店舗
・ピザハット 約500店舗


 冒頭に述べた全国のピザ店舗数約3,600件のうち半数以上はこの3社が占めていることになります。


 つまり、『店舗型・移動販売型・宅配型』どのような店舗で経営するにしても、この宅配ピザ3社の価格設定がピザ業界の価格を形成していることを考慮しなければなりません。

 どのお店もMサイズのピザの大半が2,500~3,500円の価格設定になっています。


 一件ずつ自宅まで配送するドライバーの人件費が含まれている分、宅配ピザはかなり高額です。


コツ3−2:サイゼリアの価格

 忘れがちですが、宅配ピザの次に日本人に親しまれているピザは、サイゼリヤの格安ピザです。

 ほとんどのピザが400~500円で食べられます。

 流石に宅配ピザや本格的なお店のピザと比べると、圧倒的にチープな見た目と味ですが、手軽に楽しめるとあって、サイゼリヤの中でも主力商品になっています。


コツ4:ピザ窯は大きく3タイプ

 ピザの味を左右するピザ窯は大きく分けて3種類あります。

 美味しいピザを作れるのは、『薪タイプ>ガスタイプ>電気タイプ』となります。


ピザ窯の種類1:薪タイプ

 本格的なピザ屋の窯のイメージは、この薪を使うタイプのピザ窯です。


 宣伝効果も高く、本格的なピザが食べられるというブランド力が付くので、本気でピザ屋を経営していくなら、この薪タイプを選ぶことになるでしょう。


 その他の窯と違い排煙設備も必要になるので、設置費用は500万円。また、薪代も毎月10万円以上かかります。


 美味しいピザが作れる分、設置費用も高額で日々の燃料代も高額になるのが薪タイプの特徴です。


ピザ窯の種類2:ガスタイプ

 薪タイプの次に選択肢に入るのが、ガスタイプのピザ窯です。


 やはり薪に比べて味は落ちてしまいますが、火加減の調整が簡単な分技術力が求められません。

 また、世界情勢の変化で薪が調達しにくいことはありますが、日本国内でガスが止まることはまずありません。


 手軽さと味の両立を考えるなら、ガスタイプのピザ窯が一番です。


ピザ窯の種類3:電気タイプ

 電気窯は、本格的なピザ屋経営をするならあまりおすすめ出来ません


 火力が弱く、薪やガスのように短時間に高温で焼き上げるようにはなりません。


 表面がサクッとした食感のピザを作りたいなら、その他の窯を使用しなければなりません。


コツ5:内装にこだわる

 『高いお金を払うのだから、質の高いサービスが受けられるだろう。』と考える人は多いです。

 高級ブランド品のお店のショーケースが汚れていたら、それだけで違和感を感じるはずです。

 流石にピザ屋と高級ブランドのお店を比較することは出来ませんが、週一で通う『ラーメン屋』とお祝いごとの時だけ通うピザ屋のサービスが一緒なら幻滅されます。


 そこで、あまりお金をかけずにすぐに改善出来るのが内装です。

 高いものを揃えるのではなく、清潔感オシャレ感を出すように意識しながら、普段あまり接することのないヨーロッパ調の内装にすれば特別感が出ます。


 ピザは注文してから商品が提供されるまで時間のかかる商品です。

 そうなると、『他の飲食店』に比べてなんとなく周りを眺める時間が増えます。

 よって、内装が与える心理的効果が『他の飲食店』に比べて高いです。


コツ6:多店舗展開は慎重に

 1店舗目が成功してくるとついつい考えるのが2店舗目3店舗目の出店です。

 しかしピザ屋は、高額なピザ窯を設置しなければならないことと、高い技術力を持った厨房スタッフが必要なため、『他の飲食店』よりも多店舗展開が難しい業界です。

 成功すれば大きく稼げるので否定はしませんが、かなりリスクが高いことは意識しておきましょう。


まとめ:ピザ屋はライバルが少なくおすすめ


 ピザ屋は、人気の『ラーメン屋』、『そば屋』、『うどん屋』と比べると圧倒的に店舗数が少なく、ブルーオーシャンです。

 また、ライバルとなるのも宅配ピザ格安チェーン店のみで、本格的な職人が作るピザを食べられるお店は少なく、強気な価格設定でも十分に経営が出来るでしょう。


 ただし、多店舗展開との相性が悪いので、1店舗をしっかりと経営していきたい人に向いているお店と言えるでしょう。


 多店舗展開まで考えるのなら、『他の飲食店』も選択肢に入れると良いかもしれません。