たい焼き屋は儲からない?
わずか5坪で営業することも可能なため、スーパーの入り口で良く見かけます。
たい焼き屋の初期費用は飲食店の中ではかなり安めの500万円と少額であり、『原価率』も20%とかなり低いので、儲かりやすいビジネスであると言えるでしょう。
この記事では、たい焼き屋の年収や初期費用、原価率などを解説します。
たい焼き屋の年収
たい焼き屋は商品の単価が低いので、高収入を得ることはなかなか難しいです。
高収入を目指す場合は、初期費用やオペレーションの簡単さを生かして、多店舗経営をしていくのが現実的です。
たい焼き屋の初期費用
厨房設備も鉄板と冷蔵庫さえあれば良いですしイートインスペースも必要ないので、かなり狭い敷地にもお店を開けます。
また、同様の理由で机や椅子など細かな備品も少ないのも初期費用を抑えるのに貢献しています。
イートインスペースの必要な普通の飲食店だと、初期費用として最低でも1000万円は必要になるので、たい焼き屋は気軽に始められますし、失敗した時のリスクも小さいです。
たい焼き屋のメリット
メリット1:小スペースで開業できる
たい焼き屋の最大のメリットは、”超小スペース”で開業できることです。
わずか5坪(10畳)あれば営業できるので、人通りが多いけど狭くて賃料が格安になっているような物件も選択肢に入ります。
メリット2:初期費用が安い
"メリット1"でも述べた通り狭い敷地で営業できるので、毎月の賃料も安くなります。
飲食店の開業費用が平均して1000万~2000万円必要なことと比べて、たい焼き屋なら500万円もあれば余裕を持った開業を行えます。
メリット3:調理が簡単
焼き加減で多少の味や食感の差は出ますが、たい焼きは調理が簡単な商品です。
1週間も練習すれば、それなりの品質のたい焼きを作れます。
たい焼き屋なら、即日開業することも不可能ではありません。
メリット4:原価率が低い
使う小麦粉やあんこの種類にもよりますが、たい焼き1匹の原価は約30円です。
これを1匹150円で販売するとその『原価率』は20%。
もし、販売価格を1匹120円にするなら『原価率』は25%になります。
メリット5:幅広い支持層
たい焼きは1909年(明治42年)に発明されたと言われています。
それから100年以上国民に愛されてきた歴史があるので、子供だけでなくお年寄りも好んで買ってくれます。
『タピオカ』のような流行食は、どうしてもお年寄りが避けてしまうので、たい焼きの支持層の広さはメリットになります。
メリット6:一日中売れる
一方でそれ以外の時間はほとんど客が来ないので、個人経営のお店だとランチタイム後からディナータイムまでの間に一時的にお店を閉めるところもあるくらいです。
それに比べると、たい焼き屋は一日中満遍なく来客があります。
たい焼き屋のデメリット
デメリット1:廃棄率が高い
たい焼きは、5~6分ほど弱火にかけて焼き上げます。
注文されてから焼いていては、客を5分以上立ったまま待たせることになるので、普通は事前に焼いておき、保温ケースに入れて販売します。
しかし、たい焼きはすぐに味や食感が劣化してしまう食べ物で、多くのお店は20分経つと廃棄しています。
このように、長い調理時間と短すぎる賞味期限のせいで、たい焼き屋は常に作って捨ててを繰り返しています。
よって、廃棄率はその他の飲食店と比べても圧倒的に高いです。
デメリット2:客単価が低い
たい焼き1つの価格は150円ほどです。
たとえ家族用に3つ買ってくれても、たったの450円の売り上げにしかなりません。
また、たい焼き屋でドリンクやサイドメニューを買う人はかなり少数のため、客単価は相当低くなります。
もし先程の例のように、平均して1人3つたい焼きを買ってくれたとしても、客単価は450円。
1日30,000円を売り上げ目標とするなら、67人の客に200個のたい焼きを売る必要があります。
デメリット3:差別化がしにくい
たい焼きの差別化やブランド化戦略は、後述の通り存在はしています。
しかし、スーパーの軒先で販売するような"普通のたい焼き"については、差別化の方法がありません。
使う材料にこだわったとしても、その違いを顧客が感じられなければそれはただの自己満足にしかなりません。
デメリット4:参入障壁が低い
たい焼き屋は、初期費用が500万円と『他の飲食店』より少なく、難しい調理スキルも求められないので参入障壁が低いビジネスと言えます。
せっかく経営が軌道に乗ってきても、ある日突然ライバル店が近隣に出来れば、一気に経営が傾くおそれがあります。
そのようなリスクがあることを念頭に、目の前の客一人ひとりを大切にしてリピーターや評判の獲得をしておきましょう。
デメリット5:ガス代が高額
たい焼き屋は、一日中鉄板に火を入れているのでガス代が高額になります。
小規模なお店でも月5万円、繁盛店だと10万円近くガス代だけでかかります。
調理時以外には火を消すなど、ガス代の節約を常に心がけましょう。
近年では、電気タイプの鉄板も増えてきましたが、やはりガスタイプの方が高火力で一気に温められたりと利便性は高いです。
たい焼き屋のコツ
コツ1:立地がすべて
たい焼きを買う人の10人中9人は、他の買い物のついでにふと目に入ったたい焼きを"ついで買い"しているだけです。
よって、たい焼き屋は人通りの多い所を選んで出店しなければなりません。スーパーの入り口にたい焼き屋が多いのは理にかなっています。
繰り返しになりますが、たい焼きはあくまでサブイベントであって、メインイベントにはならないので、立地選びは謙虚に行いましょう。
コツ2:普通のたい焼きが一番
夢や情熱を持ってたい焼き屋を始めると、『いちご味のたい焼きを作ってみよう!』だとか『高級なあんこを使って世界一美味しいたい焼きを作ろう!』と変わったたい焼きを作ろうとしがちです。
しかし、顧客がたい焼き屋を視界に入れた時に感じるのは、『(自分の脳内でイメージする)いつものたい焼きが食べたい!』です。
商売の鉄則である顧客の求めるものを販売することを考えれば、普通のたい焼きを少しでも美味しく焼き上げることが求められます。
コツ3:種類を増やさない
売り上げを伸ばす方法としてまず思いつくのは、商品の種類を増やすことです。
たい焼き屋においては、中のあんをカスタードにしたり、抹茶にして商品のレパートリーを増やしているお店もあります。
しかし、"デメリット1"でも述べた通り、たい焼きは廃棄率が異様に高いです。
商品の種類を2倍3倍と増やしていくと、廃棄量も2倍3倍に増えていきます。
たい焼き屋で商品の種類を増やす施策は諸刃の剣であることを覚えておいてください。
コツ4:サイドメニューを増やす
"コツ3"でお伝えした通り、たい焼きの種類を増やすのは廃棄量を増やすことに繋がるため慎重に行うべきです。
そこでおすすめなのが、サイドメニューを増やす戦略です。
ソフトドリンクなら『原価率』が5~10%とかなり低く廃棄ロスを生みにくいです。
その他にも、焼きそばやお好み焼きも『原価率』が低めで消費期限もたい焼きより長いのでおすすめです。
たい焼きの種類を増やさなくても、こういったサイドメニューを増やすことでお店に幅を持たせられます。
コツ5:積極的な接客
たい焼きは生活必需品でもなく、『ラーメン屋』のようなご飯でもないので、今そこで必ず買わなければならないものではありません。
ほとんどの人はなんとなく『美味しそうだな』と考えつつ素通りします。
そこで一言お店側から声をかけられると無視する訳にもいかず、ついつい買ってしまう人もいるでしょう。
タダで出来るのに効果の高い方法なので、成功しているお店は必ず行っています。
コツ6:在庫量の調整
たい焼きの消費期限の短さや廃棄ロスの多さは繰り返し述べた通りです。
しかし、まったく在庫を置かなければいつまで経っても売れません。
適切な在庫量を一日中キープし続けるのが、たい焼き屋の腕の見せ所です。
買い物客の賑わうお昼時や夕方に在庫量を増やすのはもちろんのこと、その日の天候や近隣のお店のセールなど、同じ時間帯でも毎日来客数は違います。
それらを常に計算して適切な在庫量をキープしましょう。
たい焼きのブランド化戦略
ケース1:白いたい焼き
焼いても皮が白いのは、タピオカを生地に混ぜているからです。
生地にタピオカを混ぜているので、モチモチした食感も人気の秘密となっていました。
ケース2:羽根付きたい焼き
『たいやき神田達磨』で販売されているたい焼きには、餃子の羽根のようにたい焼きに羽根がついています。
羽根のパリパリした食感と身の部分のもっちりした食感が楽しめる人気商品です。
ケース3:賞味期限1分のたい焼き
賞味期限がわずか1分のたい焼きが京都・嵐山に販売されています。
『まめものとたい焼き』という変わった名前のお店に売られているたい焼きは、見た目の可愛さも評判になっていますが、"賞味期限1分"という話題性も人気を牽引しています。
京都本店の他にも、2022年11月に東京のサンシャインシティにも出店しています。
1つ300円とやや高級ですが、行列が出来るほどの人気店です。
ケース4:クロワッサンたい焼き
『クロワッサンたい焼き』は、"銀だこ"の姉妹店である"銀のあん"で販売されているクロワッサン生地のたい焼きです。
クロワッサンのサクッとした食感が人気で1つ240円で販売されています。
ちなみに、株式会社ホットランドは、"銀だこ"、"銀のあん"だけでなく、歌うアイス屋さん"コールド・ストーン・クリーマリー・ジャパン"を子会社化の後、吸収したことでも知られています。
まとめ:たい焼き屋は立地で決まる
また、変わったたい焼きを販売したくなる気持ちも分かりますが、顧客が求めているのはいつもの変わらないたい焼きであり、種類を増やすと廃棄量も増えてしまうので、あまりおすすめしません。
もし、たい焼き屋に勝算が無いと感じるのなら、『他の飲食店』も視野に入れると良いかもしれません。