にんじん農家は儲かる


 にんじん農家は、労働生産性が高く儲かりやすい農業です。

 にんじんは日本人に親しまれている野菜の代表格で、安定的な売り上げが期待できます。


 ただし、発芽させるまでが難しく花が咲く"とう立ち"になれば廃棄しなければならないなど、にんじんならではのデメリットもあります。


 この記事では、にんじん農家の年収や初期費用、メリットデメリットや経営のコツを解説します。


にんじん農家の年収


 にんじん農家の平均年収は400万円です。


 全体の40%の農家が年収300万円以下であることを考えると、にんじん農家は農業の中では稼げる部類に入ります。

 また、にんじん栽培は手間があまりかからないので、他の作物と合わせて栽培してさらに収入を上げる方法も有効です。


にんじん農家の初期費用


 にんじん農業は、農業の中でも初期費用を抑えられる路地栽培です。


 ハウスを建設しなくて良いので、にんじん農家の初期費用は150~300万円で済みます。

 ハウスを建てる施設栽培なら1000万円以上になるのが普通なので、にんじん農業は初心者にも始めやすい農業です。


にんじん農家のメリット


メリット1:手間がかからない

 にんじん農家のメリットは、手間がかからないことです。

 『にんじん栽培は発芽したら成功』と言われており、発芽するまでは細心の注意を払いますが、その後は間引きや雑草取りはあるものの基本的には放置で成長してくれます。


 『トマト』や『きゅうり』は、水や栄養分の量によって身が裂けたり大きく曲がったりして商品にならなくなる恐れがあり、丁寧に栽培する必要があります。

 にんじんは、そこまで繊細に栽培しなくても商品として出荷できるのが強みです。


メリット2:初期費用が安い

 にんじん農業は、露地栽培なので初期費用は150~300万円と農業の中では少額です。


 ただし、にんじんは面積あたりの収益性が低いので、他の作物に比べて広い畑が必要になり、その取得費用が少し高めになります。


 それでも施設栽培ならハウス1棟でも500万円以上かかるので、それと比べればかなり安い費用で始められるでしょう。


メリット3:時給が高い

 にんじん農家の労働生産性は高く、時給換算で1,200円ほどになります。


 最低賃金を割ることも珍しくない農業の中で、時給1,200円はかなり高い部類に入ります。

 一例として、『ほうれん草農家』の平均時給はわずか820円です。


メリット4:所得率が高い

 所得率とは、出荷額に対する所得の割合を示すものです。

 例えば、100万円分のにんじんを出荷して、人件費や燃料代を支払った後に残る所得が30万円のとき、所得率は30%です。


 『玉ねぎ農業』の所得率は8%『レタス農業』の所得率が19%の中で、にんじんの所得率は31%と農業全体で見ると高水準です。


メリット5:指定野菜

 にんじんは、農林水産省が定めている"指定野菜"に含まれています。

 指定野菜を"指定産地"で生産すると、もし作物の価格が下落しても保証金を受け取れます。

 にんじんの指定産地は北海道から沖縄まで日本全国に分布しているので、ある程度好きな地域で働けるのも大きな魅力です。


にんじん農家のデメリット


デメリット1:面積あたりの収益が少ない

 にんじん農業は、面積あたりの収益が少ないです。


 にんじん農業の10a(アール)あたりの収益額は15万円で、『きゅうり』や『トマト』の300万円と比べるといかに少ないかが分かります。

 にんじんの専業農家で年収300万円を得るには、単純計算で2ha(ヘクタール)の土地が必要で、これは東京ドームの0.4個分に相当します。


デメリット2:発芽するまでが難しい

 『にんじん栽培は発芽したら成功』と言われているくらい発芽するまでが難しい作物です。

 もちろんプロの農家なら普通に発芽させられますが、最初の1.2年は試行錯誤することになるでしょう。


 にんじん栽培は、土台となる"土作り"から始まります。

 "土作り"と"種まき"がにんじん栽培で最も大切な仕事です。


デメリット3:とう立ちのリスク

 "とう立ち"とはにんじんに花が咲いてしまう状態を指します。

 花を咲かせることに養分を使ってしまうので、とう立ちしたにんじんは筋っぽくなり出荷できません。


 そうならないために、トンネル栽培のように温度管理をしていく必要があります。

 ただし、こちらも農家なら普通に防げることなので、あまり心配する必要はないでしょう。


にんじん農家のコツ


コツ1:労働力を調整する

 にんじん農業は、栽培までの労働力は少なくて良いですが、収穫時は根菜のため大変です。


 春蒔きのにんじんの収穫期は7~8月、夏撒きのにんじんの収穫期は12~2月です。


 これらの時期に他の仕事が重ならないように、労働力を調整しておく必要があるでしょう。


コツ2:土作りにこだわる

 『にんじん栽培は発芽したら成功』と言われており、その際重要になるのが土作りです。


 また、『にんじんほど土づくりが収穫量や品質に影響される作物はない』とも言われており、発芽後の成長にも土の質が関わってきます。


 にんじん農家は他の農家以上に土にこだわりを持たなくてはなりません。


コツ3:機械化

 にんじん農業は、種まきから収穫まで機械化されています。

 
 最初からすべての作業を機械化すると中古で揃えても1000万円以上かかってしまうので、1年目は手作業ですべて行いながらそれぞれの作業量を体感して、1~2年に1つずつ機械を増やしていけると生産効率や年収がどんどん伸びていくでしょう。


コツ4:連作か輪作か

 にんじんは、他の作物に比べると連作障害になりにくいです。

 それでも毎年同じ畑でにんじんばかり作っていると、連作障害に陥る可能性があります。

 よって、1~2年畑を休ませながらにんじんだけを作る運用方法と、にんじんの後に『にんにく』や『玉ねぎ』を輪作する運用方法のどちらかを選択することになるでしょう。


高麗人参の方が儲かる?


 少し話が逸れますが、高麗人参は普通のにんじんよりも高単価なため儲かるような気がします。

 しかし、仮に畑で栽培するにしても『土作りに2年、栽培に6年、その後10年はその土地で作物が育たなくなる』という農業に適さない作物です。

 普通に栽培していくのならほぼ確実に普通のにんじんの方が儲かります


まとめ:にんじん農家は儲かりやすい


 にんじん農家の労働力は時給1,200円に相当します。

 広い土地さえあれば年収500万円以上も狙っていけるでしょう。

 また、にんじんは日本人に親しまれており、20年後30年後も一定の需要が見込めるので、安定的に収益を稼げます。


 ただし、にんじんは発芽させるまでが難しく、種まきの前の土作りから丁寧に行っていく必要があります。

 一つのことにこだわれる職人のような性格の方がにんじん農業に向いているでしょう。


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