焼肉屋経営は儲かる


 個人経営の焼肉屋オーナーは儲かります。


 それは焼肉の客単価が高いことや、人件費を抑えられるからです。

 しかし、開業資金が高いことや、原価率が高いデメリットもあります。


 この記事では、焼肉屋経営者の平均年収や初期費用、メリット・デメリット、さらに儲けるコツを解説します。


焼肉屋経営の年収


 個人経営の焼肉屋オーナーの平均年収は300万円です。

 1店舗では大きく稼ぐことは難しいですが、複数店舗経営すると年収1000万円以上も目指せます。

 仮に1店舗あたり300万円の収入が得られるのなら、3~4店舗経営出来れば年収1000万円を超えていくでしょう。


 ただし、他の飲食店に比べて初期費用が高いので、2店舗目以降を出店するためには、1店舗目で大きな利益が生み出せてからになります。


焼肉屋経営の初期費用


 焼肉屋の初期費用は規模にもよりますが1500~3000万円ほどかかります。


 普通の飲食店の初期費用が1000万円ほどであることと比べると、焼肉屋の初期費用は高額です

 その理由は、ロースター付きのテーブルが高額なことや排煙装置の設置など、焼肉屋ならではの設備が必要になるからです。


 ただし、元々焼肉屋だった中古物件を取得出来れば、初期費用を1000万円以下抑えられます。


焼肉屋経営のメリット


メリット1:日本人に人気

 焼肉は、昔から日本人に大人気の食べ物です。

 あらゆるアンケート調査で、好きな食べ物ランキングのトップ5には必ず焼肉が入っています

 特に祝い事特別な日に利用されることも多く、贅沢品のイメージが付いています。


 中には肉が苦手な人もいますが、焼き野菜や海鮮焼き、クッパやビビンバなどを肉以外のメニューも充実させておけば問題ありません。


メリット2:客単価が高い

 焼肉の客単価は3,000~5,000円とかなり高額です。

 『ラーメン屋』や『たこ焼き屋』の客単価が1,000円以下なのと比べると、焼肉屋はその3~5倍の客単価になります。


 その分少ない客数でも経営が成り立つので、集客力の弱い個人経営の飲食店にとっては、客単価が高いことは大きな武器になります。

 また、狭い敷地で座席数を確保出来ないようなお店も、高級焼肉店として経営すると少ない座席数でも黒字化出来るかもしれません。


メリット3:廃棄率が低い

 焼肉に使う肉は、基本的に冷凍保存しているのでその日の内に売り切る必要がありません。

 中には希少部位もあり在庫が残ってしまうこともありますが、日替わりのおすすめ品としてメニューに載せて在庫量をコントロールすることも可能です。


 その日のうちに大半を売りきらないといけない『寿司屋』と比べると、廃棄率が少ない焼肉店の方が『原価率』も抑えられます。


メリット4:人件費を抑えられる

 焼肉屋が他の飲食店と比べて異質な点は、調理を客が行うことです。


 例えば、『寿司屋』なら板前職人が、『パスタ屋』や『ピザ屋』ならシェフが必要となり、当然専門スキルが必要な分だけ高い給料を支払わなければなりません。

 しかし、焼肉屋は客が自分で調理を行ってくれるので、人件費の高いシェフや職人を雇う必要もな、トータルの人件費はかなり抑えられます。


 芸能人が良く焼肉屋を始めるのはこれが理由の一つです。


メリット5:価格による差別化

 焼肉屋は価格帯によって近隣のライバル店との差別化が行なえます。


 『ラーメン屋』ならほぼすべてのお店が1杯500~1,000円で販売されており、その価格差はわずか500円ほどです。

 しかし、焼肉屋なら1人前2,000円前後の格安チェーン店から1人前10,000円ほどの高級チェーン店まで様々な価格帯のお店があります。

 さらには、接待に使われるような超高級店になると、1人前20,000~30,000円になることもあります。


 このように焼肉屋は用途によって価格差が大きく、たとえ近隣に大手焼肉チェーン店があったとしても、価格帯を変えることで客の奪い合いを避けられます。


メリット6:一年中売れる

 焼肉屋は、冬より夏の方がやや売り上げが多くなりますが、一年を通して安定的な売り上げが期待されます。

 飲食店の中には、『かき氷屋』のような夏にしか売れないお店や、『焼き芋屋』のような冬にしか売れないお店もありますが、焼肉屋にそのようなデメリットはありません。


 時期により売り上げのムラが激しいと、経理面や人員面で季節ごとに細かな調整が必要となり、経営難易度が上がります。

 そういった点で見れば、焼肉屋のような一年を通して安定した売り上げになるお店の方が経営が楽です。


焼肉屋経営のデメリット


デメリット1:強力なチェーン店

 焼肉屋の大手チェーンの店舗数は以下の通りです。


大手焼肉チェーン店の店舗数
・牛角     約600店舗
・焼肉キング  約300店舗
・七輪焼肉安安 約200店舗
・安楽亭    約150店舗
・牛繁     約150店舗
・あみやき亭  約100店舗


 これらの大手チェーン店は大量仕入れにより高品質な肉を低価格で提供しているので、個人経営の焼肉屋が同じ土俵で戦うと苦戦します。

 特に焼肉業界ならではの仕入れ方法として"一頭丸ごと仕入れ"も大手なら可能で、そうなるとさらに安価になったり希少部位も仕入れられたりとメリットは大きいです。


 チェーン店にはない雰囲気のお店にしたり、他のお店ではなかなか食べられない希少部位を提供したりと、大手と差別化出来るものがあると理想的です。


デメリット2:高い原価率

 焼肉屋は『原価率』が高い業界です。

 一般的に『飲食店の原価率は30%以下に抑えなさい』と言われている中で、焼肉屋の『原価率』は35%です。

 ここで無理に原価率を30%以下に抑えようとすると、肉の質が下がりライバル店に客を奪われてしまうので、原価率の引き下げを行うべきではありません。

 タッチパネル注文のシステムを導入したり従業員の導線を工夫したりと、その他の部分で支出を抑える努力が求められます。


デメリット3:テイクアウト

 テイクアウト注文は、近年の情勢もあって急激に市場規模を拡大しています。

 しかし、焼肉屋はテイクアウトに対応しにくい業界です。

 これに関しては諦めて、その他の所に力を入れて売り上げを伸ばすべきでしょう。


デメリット4:お酒離れ

 近年では特に若者を中心にお酒離れが進んでいます。

 次のグラフは1999年と2019年の年齢別の飲酒率ですが、20年で飲酒率が大きく下落していることが分かります。


 昔から"焼肉とビール"をワンセットに考えている人も多く、飲酒量が減ったことは焼肉業界にも悪影響を与えています。


デメリット5:回転率の低さ

 焼肉は、客が少しずつ肉を焼きながら食事をするので、平均滞在時間が長く回転率が低くなります。

 しかし、その分だけ客単価も高いので、あえて回転率を高める取り組みを行うよりも、さらに客単価を高くする取り組みを行う方が売り上げを伸ばせます。


焼肉屋経営のコツ


コツ1:初期費用を抑える

 焼肉屋の初期費用は1500~3000万円かかります。

 それは、肉を焼くロースター付きのテーブルや焼いた肉の煙を店外に排出する排煙装置など焼肉屋ならではの支出が大きいからです。

 そこで、元々焼肉店だった店舗を借りたり、設備を中古で揃えるようにして少しでも支出を抑えると良いでしょう。


コツ2:コンセプトを明確にする

 何も考えずにただ肉を仕入れてお店を開くだけだと、大手チェーン店より割高で内装やロースターも悪いという大手チェーン店の劣化版になってしまいます。

 "お酒の種類が豊富"や"気さくな店主と話せる"のようなコンセプトを明確にして経営する方が上手くいきます。

 その他にも、"一人焼肉専門店"や"韓国焼肉専門店"、"食べ放題"も集客効果が高くおすすめです。


コツ3:肉の質にこだわる

 ここまで色々な側面から焼肉屋を見ていきましたが、やはり一番大切なのは"美味しさ"です。

 特に最近ではSNSの普及により悪い噂は一瞬で広まってしまうので、肉の質にはこだわるべきでしょう。

 肉の目利きが出来ないと、質の悪い肉を押し付けられることもあるので、肉に対する知識を備えるのは必須です。

 また、人脈がないとそもそも上質な肉が自分の手元に来ないので、問屋を始めとした関係者との人脈作りも積極的に行いましょう。


コツ4:多店舗経営も視野に

 1店舗目が軌道に乗ってきたら、多店舗経営も検討の余地があります。

 多店舗経営が上手くいけば年収1000万円以上も見えてくるからです。

 また、店舗数が多くなると肉の仕入先と交渉して仕入れ単価を下げたり、経営の効率化にも繋がります。


 自分ですべて行える1店舗目と違い人を使うスキルも必要になってくるので、また違った大変さや楽しさがあります。


コツ5:食中毒に要注意

 2011年に5人が死亡した集団食中毒事件により、当時20店舗を経営していた"焼肉酒家えびす"は直後に廃業に追い込まれました。

 一度食中毒事件を起こしてしまえば、確実にその店舗で営業を続けていくことは出来ません。


 牛や豚の"生レバー"は、法律で提供を禁止されていますし、"ユッケ"も外側を加熱した肉の内部のみ使うことが許されています。

 実際に生レバーを"炙りレバー"と称して提供していたお店の店主も逮捕されているので、そのような誤魔化しも通用しません。


 法律を犯して生レバーや未加工のユッケを提供して多少の売り上げが上がったとしても、廃業や逮捕のリスクを常に負うことを考えれば、まったくメリットがありません。


コツ6:原価率の調整

 焼肉屋の『原価率』は平均して35%と高めです。

 しかし、すべてのメニューの『原価率』が35%という訳ではなく、10%台から40%台まで商品ごとに『原価率』は異なります。

 一般的に、"カルビ"や"ビール"など集客力のあるメニューは『原価率』を高くしてお得感を出し、ソフトドリンクやおつまみなどは低い『原価率』で利益増に繋げているお店が多いです。

 このように、各商品の『原価率』をしっかりと計算してお店全体の『原価率』をオーナーがコントロールしていけると、売り上げや利益を最大化させられます。


まとめ:高単価な焼肉屋は儲かりやすい


 焼肉屋は客単価が高く少ない客数でも儲けられるので、個人経営との相性は良いです。

 それでも無策に焼肉屋を開業しても大手に淘汰されてしまうので、何か差別化の出来るコンセプトが求められます。

 焼肉屋は初期費用が高額で原価率も高めの業界ですが、客単価も高いので上手く経営していければ大きく儲けられるでしょう。


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