寿司屋経営はボロ儲けってホント?


 寿司は高級な日本食の代名詞ともなっており、寿司屋は高単価で稼げるビジネスです。

 巷で噂されているように、上手く経営していばボロ儲けします。

 そんなこともあり、寿司屋は脱サラして独立開業する人にも人気です。


 しかし、ここ20~30年で回転寿司が徐々に日本に浸透し、個人経営の寿司屋の協力なライバルにもなっています。


 この記事では、寿司屋を個人経営した時の年収や初期費用、儲けるコツについて解説します。


寿司屋経営の年収


 寿司屋を経営する人の平均年収は400万円です。

 平均年収は400万円ですが、経営方法や人気具合により大きく年収の差があります。


 特に、メニューに"時価"と書かれるような高級路線のお店なら、1人あたりの客単価が2~3万円にもなり、上手く経営していければ1店舗でも年収1000万円以上も目指せます。

 個人経営が低価格帯で勝負しようとすると、大量仕入れや経営の効率化の進んでいる大手回転寿司チェーンには敵わないので、しっかりと技術を身に付けて高価格帯に挑戦する方が良いでしょう。


寿司屋経営の初期費用


 寿司屋を開業するために必要な資金はおおよそ1500万円が相場です。

 主な金額はこちらの通りです。


寿司屋の初期費用
・物件取得費(家賃の10ヶ月分)250~350万円
・改装費 500~800万円
・厨房設備費 200万円
・その他備品費 200万円
・合計 1150~1550万円


 飲食店としては平均的な初期費用になるでしょう。

 その他にも最初の1年は赤字でも生活できるだけの生活費も必要です。


寿司屋経営のメリット


メリット1:狭い敷地で良い

 寿司屋はカウンターだけでも営業出来るので、狭い敷地で開業出来ます。

 これが家族連れをメインターゲットにしている『焼肉屋』なら、テーブル席や座席が中心となり、広い敷地が必要です。


 敷地が狭すぎて他の飲食店が入れない物件は、賃料が安かったり人通りが多い所もあります。

 そのような物件で開業出来れば、ビジネスの成功率は高まるはずです。


メリット2:単価が高い

 高級料理の代名詞の寿司は、高単価の商材です。

 客も『寿司は高いもの』という固定観念を持っているので、高単価でも集客出来ます。


 高級寿司店なら客単価が2~3万円になるので、1日10人しか客が来なくても売り上げは20~30万円、利益も3~5万円にはなるでしょう。


 これほどまでに高級寿司屋の値段が高いのは、毎日市場に仕入れに行く労力や目利き力に対する料金が含まれていることと、接待や大人のデートで見栄を張れるような価格設定にしていることが影響しています。


メリット3:客との会話を楽しめる

 カウンターの寿司屋ならではのメリットとして、客との距離が近いことがあります。


 わざわざカウンター席の寿司屋に行く人の中には、『馴染みの大将と話したい』という人も一定数います。

 馴染みの客と話すのが好きな人なら、毎日楽しく仕事が行えるでしょう。


 接客術や会話術を勉強しておけば客に居心地良く過ごしてもらえ、売り上げアップに繋がります。


メリット4:特別感がある

 寿司は高級な食べ物で、昔からお祝いごとなど特別な日に食べられています。

 普段の生活では自動販売機を使わないようにしたり、コンビニに行く回数を減らしたりと10円100円単位の節約に励んでいる人でも、特別な日には財布の紐が緩むことは多いのではないでしょうか。

 このように、寿司屋や『焼肉屋』のような特別感のあるお店は客単価を上げやすいので、『他の飲食店』よりも少ない客数でも十分に採算が取れます。


メリット5:差別化しやすい

 現在日本の寿司業界で覇権を握っているのは間違いなく"回転寿司"です。

 参考に、大手回転寿司チェーンの店舗数は次のようになっています。


回転寿司店舗数ランキング
1位:スシロー  約650店舗
2位:はま寿司  約550店舗
3位:くら寿司  約500店舗
4位:かっぱ寿司 約300店舗


 このように、上位4社だけで全国に約2,000店舗もあり日本の市町村が約1,700個なので、各地町村に必ず1店舗は回転寿司屋がある計算になります。


 これらの大手回転寿司チェーンは、大企業ならではの大量仕入れや徹底したコストカット戦略を取っており、『原価率』が50%と圧倒的に高く(一般的な飲食店の『原価率』は30%が目安)"コスパ"の面では太刀打ち出来ません。

 それでも、個人経営の"回らない"寿司屋と回転寿司は差別化されているので、過度にライバル視する必要はありません。


メリット6:安定的に稼げる

 『焼き芋』が秋~冬にしか売れなかったり『かき氷』が夏にしか売れないように、季節によって売り上げが大きく変わってしまう飲食店はたくさんあります。

 また、『タピオカドリンク』や『白いたい焼き』のような話題性の強い商材は、ブームが去ってしまえばまったく売れなくなります。


 寿司屋はこのような季節性や話題性が無く常に安定した売り上げになるので、生涯の職業として定年を迎えるまで1つの仕事を続けられます。


寿司屋経営のデメリット


デメリット1:回転寿司がライバル

 個人経営の寿司屋でもライバルとなるのは回転寿司です。

 現在の回転寿司業界は4強時代です。


大手回転寿司店舗数
1位:スシロー  約650店舗
2位:はま寿司  約550店舗
3位:くら寿司  約500店舗
4位:かっぱ寿司 約300店舗


 最近の回転寿司はネタの質も高く、『原価率』も個人経営が太刀打ち出来ないほど高くなっているので、あえて個人経営の寿司屋にいかなくても美味しい寿司が食べられます。

 個人経営の寿司屋が大手回転寿司と同じ低価格路線で戦うのは難しいので、中価格~高価格帯の店舗運営が求められます。


デメリット2:廃棄ロスが多い

 寿司ネタは鮮度が命です。


 個人経営のお店では1日に来店する客数に幅が出てしまうので、多めネタを仕入れてしまうと廃棄ロスになってしまい、少なめにネタを仕入れるとネタ切れを起こします。


 季節や天気、イベント事などを総合的に判断して、毎日適切な量と種類を仕入れる経営力が求められます。


デメリット3:食中毒のリスクが高い

 やはり"生もの"を扱う寿司は食中毒のリスクが高いといえます。

 実際に毎月のように、全国の寿司屋で食中毒が発生しています。

 もちろん、自店舗で食中毒が発生したら数ヶ月間はお店を閉めることになるでしょうし、信用を失ってしまうので個人経営の資本力では廃業することになるでしょう。


 特に、店内で食事をしてもらう分には滅多に食中毒にはならないですが、テイクアウトも行う場合はいつ客が食事をしてくれるのか分からないので注意が必要です。


デメリット4:仕入れと仕込みの手間

 寿司屋の仕事は営業時間の接客だけではありません。

 開店前の清掃や閉店後の精算だけでなく、寿司屋ならではの仕事に仕入れと仕込みがあります。


 いいネタを仕入れるには目利き力はもちろん必要ですが、人脈もないとそもそもいいネタが回ってきません。

 また、仕込み作業は一つ一つのネタごとにやり方が違っており、品数が多くなるほど仕込み作業が多くなります。


 仮に1日8時間の営業時間だったとしても、これらの作業を含めると1日10~12時間労働になることも珍しくありません。


デメリット5:需要が少ない

 寿司は高級料理のため、『ラーメン屋』や『パスタ屋』と比べると頻繁に訪れることが難しいです。

 つまり、『他の飲食店』に比べて相対的に需要が少ないと考えられます。


 このような状態で、近隣に他の個人経営の寿司屋があると、客の取り合いになってしまいます。

 『他の飲食店』以上に市場調査を綿密に行ってから出店することが求められます。


寿司屋経営のコツ


コツ1:お酒を提供する

 寿司屋の多くはお酒を提供しています。

 お酒を提供することで単価の高い"御造り"が売れるようになります。

 また、寿司とお酒をセットで考えている客層もいます。

 いずれにせよ、お酒を販売することで客単価や客数を増やせるでしょう


 お酒を提供すると、"刺し身が食べられる居酒屋"として利用されることもあるでしょうが、そこは利益を優先して寿司屋としてのプライドは捨ててしまいましょう。


コツ2:海外出店もあり

 海外で本格的な寿司屋を経営するのも良いでしょう。


 日本国内でイタリア人が経営するピザとパスタのお店が重宝されるように、海外で日本人が握る寿司は需要があります。


 日本に近いアジア圏の国々や、"カルフォルニアロール"で有名なアメリカの出店が多いです。

 やはり所得の高いアメリカの方が、アジア諸国より稼ぎやすいでしょう。


 ただし、海外に移住しなければなりませんし、異文化の風習に頭を悩ませることもあります。


コツ3:高級路線で勝負する

 やはり低価格路線は回転寿司が席巻しているので、苦戦することが多いでしょう。

 目の前で握ってくれる特別感があるので差別化はされていますが、客単価が低いので個人経営店の集客力では経営が難しいです。


 集客力の弱い個人経営店なら、高価格帯で経営するのがおすすめです。

 回転寿司の客単価は1,500~2,000円。高級寿司の客単価は20,000~30,000円


 回転寿司が高級寿司と同じ売り上げにするには、15倍の客数が必要です。

 言い換えれば、高級寿司は回転寿司の1/15の集客力でも経営が成り立ちます


 個人経営店と高価格帯の相性は良いのです。


コツ4:修行は不要

 寿司業界には『飯炊き3年握り8年』という言葉があります。


 これは、寿司職人が一人前になるまでの修行期間を表しており、最低でも3年は寿司を握ることすら出来ないと言われています。

 たしかにこれは昔の風習で今ではもう少し緩くなっていますが、寿司屋で修行をすると肝心な寿司を握る仕事よりもその他の雑務ばかりすることになってしまい技術が身につきません。


 近年では無料動画でも寿司の握り方を解説しているものもあるので、自分一人で練習する手もあります。


コツ5:回転率

 寿司屋の回転率戦略には2つの考え方があります。


 一つは、高回転率を意識したお店作りです。

 回転率を高めることで、少ない客席数でも多く稼げるようになります。

 中には、立ち食い形式の寿司屋もあり、これは回転率を意識した戦略を取った結果です。


 もう一つは、回転率よりも客単価を意識したお店作りです。

 落ち着いた店内でゆっくりと食事をしてお酒やおつまみも頼んでもらい客単価を高くすれば、少ない客数でも多く稼げるようになります。


 どちらのコンセプトも一長一短があり、その地域によってどちらがより稼げるかも変わってくるので、自分のステータスを良く考えて適正のある戦略を取ることが大切です。


コツ6:明るい接客

 頑固で職人気質な板前もいいですが、そのような接客が苦手な客もいます。

 笑顔がある所に人が集まるのは様々な研究からも明らかですし、体感的にも理解出来ると思います。

 常に笑顔を忘れずに明るい接客を行えば、自然と客数が増えていくでしょう。 


まとめ:個人経営の寿司屋は中~高価格帯で営業する


 個人経営の寿司屋は回転寿司と張り合わずに、中価格帯高価格帯で勝負をする方が儲けやすいです。


 接待などに使われるような高級寿司屋は"見栄"も一緒に販売しているので、同じサービスでも高いお店の方が繁盛するような逆転現象も起こります。

 また、寿司職人に言われる『飯炊き3年握り8年』は時間がもったいないので、修行するにしても1~2年で独り立ちさせてくれる所を探しましょう。


 当ブログでは『他の飲食店』に関する記事も多数掲載しています。合わせてご覧ください。