南アフリカランドはなぜ下がる?
南アフリカランド/円の2009年からの為替相場は、このように上下に波を描きながらも長期的に見れば右肩下がりです。
なぜ南アフリカランドは、このように下落傾向にあるのでしょうか。
南アフリカランドが下落する理由
南アフリカランドのインフレ率
南アフリカランドが下落している理由は、南アフリカ経済のインフレ率が高いからです。
南アフリカのインフレ率は毎年5%前後で、日本が頑張ってインフレ率を2%に上げようとしているのと比べると、インフレ率5%がかなり高いことが分かります。
インフレ率とは物価の上昇率のことです。
りんごはいくら?
例えば、今年100円だったりんごが来年120円になっていたら、インフレ率は+20%です。
今年100円でりんごが買えたのに、来年は100円でりんごが買えないので、100円の価値が下がったとも考えられます。
つまり、インフレとは物の値段が上がり、通貨の価値が下がることを指します。
南アフリカのような新興国では、毎年経済が成長しているので物価も上昇していくのが普通です。
言い換えると、南アフリカのような新興国では、日々通貨の価値が下がっているとも言えます。
南アフリカランドという通貨の価値が日々下がっているので、ランド/円の相場も長期的に見ればどんどん下がるようになっています。
南アフリカランドの底値
南アフリカランドの底値は、2020年4月末に付けた『1ランド5.6円』です。
瞬間的に5円台まで下がりましたが、すぐに6円台に復帰し、2020年の年末には7円台まで上昇しました。
南アフリカランドは、徐々に下落していく運命にあるので、いずれ最安値を更新するでしょうが、その際にこの『1ランド5.6円』という数字は意識されるでしょう。
過去の急落の理由
コロナショック(2020年4月頃)
2020年4月に過去最安値を記録したのは、同年2月頃からコロナショックにより世界中の株価が暴落するなどリスク回避の動きが起きたからです。
南アフリカランドのようなハイリスクハイリターンの通貨は、株式などと同じくリスク資産に含まれるので、世界経済にバッドニュースがあれば下落します。
チャイナ・ショック(2016年2月頃)
2016年の年始に、中国の株価暴落から始まり世界中の株価が暴落する事件がありました。
南アフリカは、中国が最大の貿易相手なので、他の新興国以上に敏感に反応して下落しました。
リーマン・ショック(2008年9月)
近年で最も大きな世界金融危機であるリーマン・ショックは、南アフリカランドを大暴落させました。
2008年9月時点では1ランド約14円でしたが、同年12月には1ランド約9円まで下落しました。
わずか3ヶ月で30%以上も為替相場が下落するのは、新興国通貨ならではの特徴です。
売りスワップで儲けることは出来るのか
結論としては、南アフリカランドの売りポジションで儲けることは難しいです。
南アフリカランドの売りポジションを保有すれば、為替の下落に合わせて為替差益が得られますが、それ以上のマイナススワップが付いてしまい、損をするケースがほとんどです。
南アフリカランドの売りで儲かる可能性がある方法として、リーマン・ショックのような世界的な金融危機が起きた時には、ほぼ必ず南アフリカランドは暴落するので、ニュースの初動に売りを仕掛けられれば儲かる可能性が高いです。
その場合でも、欲張ってポジションを持ち続けると、徐々にマイナススワップが溜まっていくので、数ヶ月以内にポジションを決済することをおすすめします。
南アフリカが上がる要因
要因1:世界経済が好調
世界経済が好調なときは南アフリカランド相場が上昇しやすいです。
世界経済が好調なときは、世界中の投資家が利回りの高い金融商品を購入していくので、為替の世界では南アフリカランドのような高金利通貨が買われます。
反対に世界経済が不調になると、南アフリカに投資をしていた投資家が一斉に自国通貨に資産を戻してリスクに備えるので、南アフリカランドが売られます。
要因2:金・白金が高騰
南アフリカでは金や白金、クロムなど希少な金属が多数産出されています。
それらの希少金属の価格が高騰すると、南アフリカの輸出が有利になると考えられ、南アフリカランドが買われます。
特に白金は世界で産出されるうちの75%、クロムは46%のシェアを占めており、これらの価格が上昇すれば南アフリカ経済が活性化します。
要因3:南アフリカ経済が好調
南アフリカ経済が好調なときも当然、南アフリカランドは上昇します。
さらに、世界経済が好調で南アフリカ経済も好調なときは、要因1と相乗効果が生まれて大きく上昇します。
高金利通貨国なので、政策金利に目を向けるのは勿論のこと、その他にもインフレ率や失業率など景気に敏感に反応する経済指標は毎月しっかりと確認したいところです。
要因4:中国経済が好調
中国は、アフリカ大陸への影響力を高めようと各国への支援を盛んに行っています。
南アフリカ共和国もその例に漏れず、中国と親密な関係性を築いています。
南アフリカの貿易額のうち輸出の10%、輸入の20%は中国相手で、どちらも最大の貿易相手が中国となっています。
中国経済が好調なときは貿易額も増えて南アフリカ経済が刺激されますし、中国経済が不調になれば貿易額が減って南アフリカ経済も停滞します。
要因5:利上げ
南アフリカランドのような高金利通貨にとって、最も簡単に為替相場を上昇させられるのが政策金利の利上げです。
利上げが行われれば、高金利通貨としての魅力がさらに高くなり、世界中から資金が流入します。
一般的にはインフレ率が高くなるとそれを抑制するために利上げが行われますが、ありがたいことに南アフリカのような経済発展中の国は常に高インフレに悩まされることになるので、これから先もしばらくは高金利を維持してくれるでしょう。
要因6:他国の利下げ
南アフリカが金利を据え置いても、他国が利下げを行えば相対的に南アフリカの政策金利が高くなったとも考えられます。
アメリカやEU諸国がゼロ金利政策を行っている時期には、仮に南アフリカの政策金利が3%と低めであっても相対的には高金利です。
このように、金利の高さは自国だけの絶対評価で判断するのではなく、他国との相対評価で判断することが求められます。
南アフリカランド投資のリスク
南アフリカランドが高金利である理由の一つに、南アフリカのカントリーリスクの高さがあります。
ここでは、南アフリカが抱える7つのリスクを紹介します。
リスク1:モノカルチャー経済
モノカルチャー経済とは単一の商品ばかりを生産している経済のことです。
例えば農業に注目してみると、南アフリカの農業生産額はサトウキビとトウモロコシの二種類だけで全体の95%を占めています。
このように生産物が偏っていると、気候変動で生産物が全滅するリスクがあります。
また、世界中で豊作が起こり価格が暴落しても経済が麻痺するでしょう。
モノカルチャー経済はこうした外的要因に弱いという特徴があります。
リスク2:エイズ感染者
南アフリカの平均寿命は62歳です。
かつては平均寿命が50代でしたが、ここ数年でようやく60代まで上昇してきました。
南アフリカの平均寿命が短い理由は、エイズ感染者の存在にあります。
南アフリカは、世界一のエイズ感染者が多い国で、人口の20%がエイズ感染者だとされています。
平均寿命が短いということは、まだまだ働ける年齢で亡くなる人が多いことでもあり、国内経済にとってはマイナス要因です。
リスク3:教育レベル
日本にいると信じにくい事実ですが、南アフリカには教育を受けていないことで文字の読み書きが出来ない人がいます。
かつて南アフリカでは"アパルトヘイト"と呼ばれる黒人差別政策が取られており、十分な教育を受けられませんでした。
現在ではアパルトヘイトも廃止され識字率も90%を超えてきましたが、高等教育を受けられる人は少数です。
文字の読み書きが出来なければ、お店のレジ打ちは出来ませんし、工場でマニュアル通りに作業をすることも出来ません。
高等教育を受けている人が少ないと、国内の技術革新が遅れて経済発展も遅れます。
リスク4:失業率
南アフリカの失業率の高さは世界有数です。
常に20~30%程度の失業率を維持しています。
また、黒人と白人の失業率格差も問題となっており、白人の失業率は約7%です。
高等教育を受けている人が少ないので、新たなビジネスを始める人が少ないことや、専門スキルが必要な仕事に就ける人が少ないのが問題となっています。
リスク5:犯罪率
南アフリカの犯罪率は世界的に見てもかなり高く、人口あたりの殺人事件件数はジャマイカに次いで世界2位です。
十分な教育を受けられず職に就けない人が多いと、どうしても犯罪に手を染める人が増えてしまいます。
リスク6:電力不足
南アフリカでは、定期的に電力不足による停電が起きています。
停電となれば、あらゆる経済活動が停止するので、経済的にも大きな損失となります。
リスク7:ストライキ
南アフリカでは、定期的にストライキが起きています。
停電とストライキが常時起きている状態なので、工場や採掘現場が計画的に稼働出来ていません。
南アフリカランドの今後
南アフリカランドの今後は緩やかな下落を続けるものと考えられます。
南アフリカランドのような高金利通貨は、高インフレに悩まされているから金利を高くしている側面があります。
インフレとは物価が上昇している状態を指すので、相対的に通貨の価値が下がっているとも言えます。
つまり南アフリカランドに限らず高金利通貨は、緩やかな下落をし続ける運命にあるのです。
南アフリカの金利が高い理由
まとめ:南アフリカランドはこれからも下がり続ける
この傾向は5年10年ですぐに変わるものでもないので、これから南アフリカランドに投資をする場合は、これから先も通貨価値が下落することを意識したトレードが求められます。
それでも、売りポジションを持ってしまうと、今度はマイナススワップが溜まってしまうので、高金利通貨の売りポジションは持たない方が良いです。
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