なぜメキシコペソのインフレ率が重要指標なのか
なぜなら、メキシコペソ投資の魅力であるスワップポイントは、メキシコ中央銀行が定める政策金利によって決まり、中央銀行は自国のインフレ率を参考に政策金利を決定しているからです。
つまり、インフレ率がスワップポイントの額を左右しているとも言えるでしょう。
また、インフレとは物の値段が上がることですが、普通は自国経済が発展していくと物の値段は上がっていくので、安定したインフレ率はその国の成長を示すものでもあります。
この記事では、次の事項を解説していきます。
この記事で分かること
・メキシコペソのインフレ率推移
・インフレ率は高い方が良いのか
・メキシコペソのインフレターゲット
・良いインフレと悪いインフレ
・メキシコペソの実質金利
・メキシコペソがハイパーインフレになる可能性
・インフレ率と失業率の関係性
メキシコペソのインフレ率推移
メキシコは、アメリカや日本のような成熟しきった国に比べて成長の途中にあるため、インフレ率は高い傾向にあります。
これはメキシコだけではなく、南アフリカやトルコのような国もインフレ率は高いです。
世界全体が毎年約2%のインフレをしている中で、メキシコペソは5%前後のインフレ率をキープしています。
メキシコペソはトルコリラとは違い、政府や中央銀行がしっかりとインフレ率を制御出来ているので、この先も安定的なインフレ率が期待されます。
インフレ率は高い方が良いのか
ではインフレ率は高いほど良いのかというと答えはノーです。
インフレ率とは、物価(物やサービスの値段)の上昇率です。
毎年5%程度のインフレ率なら、自然と給料も上がったり、現金や株式などもそれほど上昇の影響を受けず各個人の資産を守れます。
しかし、2022年のトルコのようにインフレ率が80%にもなると1年で物価が約2倍に膨れ上がり、給料の上昇が追いつかず労働者が物を買えなくなったり、資産の価値が半分になるので資産家も損失を受けます。
このように高過ぎるインフレ率は、国内経済を崩壊させてしまいます。
人により意見は変わりますが、先進国なら2%程度、新興国なら3%程度が理想的なインフレ率とされています。
メキシコペソのインフレターゲット
メキシコ中央銀行は、自国のインフレ率を"3±1%"としています。
メキシコの直近のインフレ率は、2021年が5.6%、2022年が7.9%とやや高めになっていますが、中央銀行が政策金利を引き上げてインフレ抑制を行っているので、今の所大きな問題にはならないでしょう。
インフレ率が高い時に政策金利を引き上げないと、トルコのようにインフレ率が制御不能になるので、この時期にメキシコ中央銀行が政策金利を引き下げるようなら、インフレ率を常にチェックしつつ投資を行うべきでしょう。
"良いインフレ"と"悪いインフレ"
良いインフレは、『給料が上がる⇒物が売れる⇒物の値段が上がる⇒・・・』と国内の経済が発展することでインフレ率が上がる状態です。
逆に悪いインフレは、『原材料の高騰で物の値段が上がる⇒物が売れない⇒企業が利益を残すためにさらに値段を上げる⇒・・・』と経済の発展が伴わずインフレ率が上がる状態です。
日本は完全に後者の悪いインフレですが、メキシコは前者の良いインフレが続いています。
メキシコペソの実質金利
2022年のメキシコペソで計算をすると『名目金利(7.875%)ーインフレ率(7.9%)=実質金利(-0.125%)』となり、実質金利はほぼゼロです。
投資をする際には、この実質金利が判断材料として使えます。
2022年のメキシコペソは、名目上の政策金利が7.8%ありますが通貨の価値が7.9%下落しているので、投資をしても実質的なリターンがほぼゼロになります。
ただし、私たち日本人投資家にとっては、2022年の日本円も大きく円安に動いていたため、メキシコペソの通貨安の影響をまったく感じられませんでした。
メキシコペソがハイパーインフレになる可能性
メキシコペソがハイパーインフレになる可能性はかなり低いものの、日本やアメリカに比べれば高いと言えるでしょう。
例えば、メキシコはアメリカ経済に依存しているので、アメリカに敵対するようなことがあれば、国内経済が麻痺してハイパーインフレになることは考えられます。
また、近年でも過去に2度通貨危機が起きており、その時のインフレ率は100%を超えていました。
1982年メキシコ債務危機
1970年代、経済発展を続けるアメリカ企業は、製造コストの高騰に頭を悩ませていました。
そこで、賃金の安い隣国のメキシコに工場を建てて、製造コストを抑える戦略に切り替えていきました。
さらに、アメリカより金利の高いメキシコ市場に目をつけた投資家も一斉にメキシコへの投資を開始し、メキシコ経済は一気に活性化しました。
しかし、1980年代に入るとアメリカの金利も上昇し、メキシコ投資の旨味がなくなっていました。
これにより次々にアメリカ資本が本国へ撤退してしまい、メキシコ経済は崩壊。
1983年にはインフレ率101%を記録しました。
1994年メキシコ通貨危機
メキシコ債務危機から12年経ち、アメリカ人はすっかりメキシコの金融リスクを忘れ、再び金利の高いメキシコへの投資が活発に行われるようになりました。
そんな中、メキシコ南部で先住民族が武装蜂起し、大統領選挙の候補が暗殺される事件が発生。
この事件により、メキシコのカントリーリスクを再認識したアメリカの投資家や企業は一斉に資金をメキシコから引き上げてしまい、再びメキシコで通貨危機が起こりました。
1995~1996年には、2年間に渡りインフレ率30%台が続きました。
インフレ率と失業率の関係性
一般にインフレ率と失業率は逆の動きをするとされています。
しかし、実際に2008年から2022年までの推移を見ると、むしろ同じ動きをしています。
おそらく、インフレによる急激な人件費の高騰に海外企業がメキシコから撤退するなど、失業者が生まれやすい状況になっているのでしょう。
メキシコペソの利回り
仮に平均5%と仮定すると、レバレッジ1倍でメキシコペソを保有するだけでも利回りは年利5%です。
さらにレバレッジをかけることで、レバレッジ2倍なら年利10%、レバレッジ3倍なら年利15%のリターンになります。
レバレッジ別リターン
・レバレッジ1倍 年利5%
・レバレッジ2倍 年利10%
・レバレッジ3倍 年利15%
メキシコペソのようなハイリスクハイリターンな通貨でレバレッジ3倍以上のポジションを持つとすぐにロスカットされてしまうので、最大でもレバレッジ3倍以内に抑える必要があります。
それでもレバレッジ3倍でメキシコペソを保有すると、スワップポイントだけで年利15%が狙えます。
メキシコペソでFIREは可能か
仮に月の生活費が20万円なら、毎月20万円のスワップポイントが得られるようになればFIRE達成です。
毎月20万円のスワップポイント得るための必要資金は、レバレッジ1倍で3000万円、レバレッジ2倍で1500万円、レバレッジ3倍で1000万円が目安です。
レバレッジ別必要資金
・レバレッジ1倍 3000万円
・レバレッジ2倍 1500万円
・レバレッジ3倍 1000万円
株式や不動産なら、3000~5000万円はないとセミリタイアするのは難しいですが、メキシコペソ投資をレバレッジ3倍で行うのなら、わずか1000万円の資金でセミリタイアが目指せます。
メキシコペソ投資の危険性
誤った投資方法を行うと、最悪ロスカットして資産を失います。
ここでは、メキシコペソの危険性を6つ解説します。
危険性1:アメリカ頼りの経済
メキシコはアメリカと国境を接していることもあり、アメリカ頼りの経済体制になっています。
メキシコ貿易のうち、輸入の50%輸出の80%はアメリカ相手です。
同じ高金利通貨の南アフリカの最大貿易相手は、輸入の10%輸出の20%が中国です。
両者を比較すると、いかにメキシコがアメリカ一国に頼り切っているのかが分かります。
もし、メキシコとアメリカが断交して貿易が停止したら、メキシコ経済は瞬時に崩壊するでしょう。
危険性2:資源通貨国
メキシコは、銀(世界2位)や原油(世界12位)の産出国です。
どちらも経済活動に不可欠な資源であり、世界各国に輸出して工業製品に使われたり燃料に使われたりしています。
このような天然資源は、世界経済が好調だと需要が高まって市場価格も上昇します。
反対に世界経済が停滞すると、物余りが起きて市場価格が下落します。
当然、これらの天然資源の価格が下がれば、それを輸出しているメキシコの通貨価値も下がります。
このように天然資源の産出国は、世界経済が好調なら通貨価値が上昇し、世界経済が不調なら通貨価値が下落する特徴があります。
危険性3:犯罪大国
メキシコは世界有数の犯罪大国です。
メキシコの人口は日本と同じ1.2億人ですが、年間殺人件数が日本の30倍以上の3万件を超えています。
また、"メキシコマフィア"という言葉が有名なように、メキシコ国内のマフィアは警察と麻薬戦争を起こせるほどの力を持っています。
これだけ犯罪率が高いと、暴力沙汰や略奪が日常的におきており、日本のように健全な商売をすることすら難しいです。
危険性4:激しい変動
メキシコのGDPは世界12位で、1位のアメリカとは20倍以上の差があります。
GDPがそのまま通貨の流通量とイコールにはなりませんが、米ドルとメキシコペソの通貨量を比べれば圧倒的にメキシコペソの流通量の方が少ないです。
市場に出回っている通貨の量が少ないということは、少ない金額で為替相場を動かせるということです。
よって、どうしても米ドルよりもメキシコペソの方が値動きが激しくなります。
危険性5:大統領
メキシコは、ここ数年安定した政権運営を行ってきました。
メキシコの大統領制度は1期6年間で再選は出来ません。
このまま任期を満了すると仮定すると、2024年6月頃に次の大統領へと交代されます。
大統領制度は直接国民によって選ばれるので、議員によって間接的に選ばれる内閣総理大臣よりも与えられている権限や影響力が大きいです。
大統領が交代となれば、日本の総理大臣が変わることよりも大きな変革がメキシコに起こるでしょう。
危険性6:スワップポイント減少
メキシコペソ投資の目的となっているスワップポイントは、各国中央銀行が定める政策金利を元に各FX会社が決めています。
スワップポイントの決め方にルールはないので、『A社では1日100円のスワップポイントが貰えるのに、B社では1日10円しか貰えない。』という事態が起こります。
また、『前日までは1日100円のスワップポイントが貰えていたのに、翌日は50円しか貰えない。』ということもよくあります。
しっかりと各FX会社の特徴を調べて、いくつかの会社で口座を開設しておくとリスクヘッジになるでしょう。
まとめ:メキシコの高インフレは悪くない
あまりに過度なインフレは国内経済にダメージを与えますが、成長を続けているメキシコにとってインフレ率5%前後はそれほど問題のない数値です。
ただし、10%を超えてくると政府や中央銀行の制御が効かなくなる恐れもあるので、これ以上インフレ率が高くなりそうなら、一度メキシコ投資から手を引くほうが良いかもしれません。
その他のスワップポイント投資に関する記事を『【まとめ】スワップポイント投資のコツ【メキシコペソ・南アフリカ・トルコリラ】』にまとめています。ぜひ他の記事もご覧ください。