トルコリラの政策金利の推移
同じ高金利通貨のメキシコペソや南アフリカランドと比べてもさらに高い金利を誇っています。
2018~2019年にかけては政策金利24%と破格の高金利でしたが、現在はメキシコペソや南アフリカランドと同水準まで下落しています。
なぜかつては24%もあった政策金利が現在は一桁%にまで下落しているのでしょうか。
その理由を解説しつつ将来の予想を行います。
なぜトルコリラの政策金利は低いのか
しかし、実際にその金利が高いか低いかは、実質金利で見極める必要があります。
実質金利は、『政策金利ーインフレ率=実質金利』という式で求められます。
インフレ率とは、通貨の価値の下落率のことです。
例えば10%の政策金利を施行していてもインフレ率が10%あると、10%の金利を受け取る代わりに通貨の価値が10%下落しているのでプラスマイナスゼロになります。
そこで、トルコリラの実質金利を計算するためにトルコリラのインフレ率を見てみるとこのようになります。
トルコリラのインフレ率は、このように近年急激に上昇しています。
2022年のインフレ率は年率80%にもなり、単純に1年で通貨の価値がおよそ半分になったことになります。
さきほど紹介した実質金利を計算すると『政策金利(10%)ーインフレ率(80%)=実質金利(-70%)』となり、圧倒的に実質金利がマイナスになっていることが分かります。
インフレ率のパーセンテージがそのままトルコリラの為替相場の下落率と一致する訳ではありませんが、これだけ政策金利とインフレ率に差があれば、トルコリラ買いで儲けることはほぼ不可能です。
今後の政策金利の予想
確かに低金利政策にもメリットがあり、時と場合によっては効果的なことも多いですが、今のトルコリラの極端な高インフレを引き起こしている原因の一つになっています。
よって、今後もエルドアン大統領政権が続く間は現在の低金利政策を維持し、10%前後の政策金利を推移していくのではないかと予想されます。
仮に大統領が交代になったとしても、次の大統領が低金利政策を維持するのか高金利政策に舵を切るのかは実際に政策金利が発表されるまでは分かりません。
トルコリラの利上げの必要性
高金利政策には、景気の過熱感を抑える効果があります。
高金利政策は景気の過熱感を抑える
景気が過熱し過ぎると、物の値段が高くても物が売れるようになるので、どんどん物価が上がりインフレ率が上昇していきます。
本来はそのような時に、中央銀行が金利を引き上げて景気を冷まします。
今のトルコ経済はそれを行わなかったので、インフレが政府や中央銀行のコントロール下になく、暴走している状態です。
海外投資家の狩り場にされている
『高インフレ時に低金利政策を行えば、インフレが起こり通貨価値が下落する』というのが現代の金融理論の基本です。
よって、海外投資家から見ると『トルコリラ売りを行えば絶対に儲かる狩り場』になっています。
過去にトルコ中央銀行が保有している米ドルを売ってトルコリラ買いを行う"通貨防衛"も行っていますが、海外マネーに歯が立たちませんでした。
結局のところ、根本的な原因である低金利政策をやめない限りはこの流れが続くでしょう。
利下げのメリット
利下げをすると企業や個人は銀行からお金を借りやすくなり、国内の経済が活性化します。
今のトルコはインフレではあるものの経済は停滞しているので、まずは国内経済を活発にしようと考えています。
また、トルコ人のほぼ全員が信仰しているイスラム教には"金利は悪"という教えがあります。
国民がお金を借りやすくなったり、国民が信仰するイスラム教の教えにも沿っている低金利政策を行うことで、政府は次の選挙を有利にしたい考えもあります。
トルコリラが上昇トレンドになるのはいつ?
それは、トルコリラが有史以来下落をし続けており、それを覆すには相当な力が必要になるからです。
ただし、一つだけ分かりやすく上昇トレンドになる可能性のある状況があります。
それがエルドアン大統領の退任です。
近年急速にトルコリラ相場が下落しているのは、エルドアン大統領が独自に提唱する高インフレ時の低金利政策によるものが大きく、エルドアン大統領が退任して別の政策が取られるようになれば、トルコリラ相場が上昇する可能性があります。
またエルドアン大統領は、自身の低金利政策に従わない中央銀行総裁を相次いで更迭してきた過去があり、世界中の投資家から『中央銀行の独立性が保たれていない。』として投資を忌避されています。
この二つの観点から、次の大統領が世界のスタンダードに従った金融政策を行えば、世界中から投資資金が流入してトルコリラ相場も上昇する可能性があるでしょう。
トルコリラはどこまで下がる?
それでも、毎年30%程度の下落を毎年続けており、このまま下落を続ければいずれ1リラ1円未満になることも考えられます。
少し前の2005年には、現在以上のハイパーインフレが起きており、"100万リラ=1新リラ"へのデノミ(新通貨発行)が行われたばかりです。
その際のトルコリラの価値は"1万リラ=1円"の価値しかありませんでした。
あまり現実的でないような数字ですが、わずか20年前に起きていた事態が再び起こっても不思議はありません。
トルコリラでスワップポイント生活は可能?
毎日得られるスワップポイント(金利収入)よりも通貨の下落率の方が大きく、トルコリラを保有すればするほど含み損を多く抱える状態になっています。
もし、レバレッジ2~3倍でトルコリラを保有すると、1年以内にロスカットされる可能性がかなり高いと考えてください。
もしかしたら、将来的にトルコリラが上昇することもあるかもしれませんが、その確率は1/10程度でしょう。
賭けとして考えてもまったく割にあいません。
トルコリラがデフォルトする可能性は?
個人に置き換えると、借金やローンの返済期日を守れない状態です。
個人ですら信用情報に傷が付きますが、国が信用を失うことはその比ではありません。
国がデフォルトしてもすぐに国が滅びるということではありませんが、当分の間借金をすることが出来なくなり、公務員への給与支払いや公共機関の営業への影響が出ます。
そして、IMF(国際通貨基金)などが介入して国体の回復に努めることになります。
このように、デフォルトすると国内経済が崩壊するので、その国の通貨の価値も暴落します。
それでは、トルコがデフォルトする可能性はあるのでしょうか。
個人期には、その可能性は低いと考えています。
今のトルコは、為替相場やインフレ率にこそ問題を抱えているものの、国内経済は安定的に機能していますし、長期政権により国内政治体制もかつてより安定しています。
自転車を漕ぎ続ければ転ばないように、国内の経済活動が行われていれば、簡単には経済が崩壊することはありません。
それでも、もしデフォルトするようなことになれば、瞬時にトルコリラ相場が大暴落することになるので、少しでも違和感を感じた時点でトルコリラ投資から撤退しておく方が安全です。
トルコリラで大損した主婦の話
興味深いのは、FXの長期売買で比較的安全とされているレバレッジ3倍でポジションを持ったのに2年間でロスカットになったことです。
いくら安全とされているレバレッジ3倍以内であったとしても、トルコリラに一点集中投資を行うと数年でロスカットになります。
これが、メキシコペソや南アフリカランドならロスカットにはなりませんでした。
それほどまでに、トルコリラと他の高金利通貨とのリスクには大きな差があります。
トルコリラと他の高金利通貨のどちらがおすすめ?
一見すると、トルコリラの政策金利は他の政策金利とは別次元に高く儲かる気がします。
しかし、その見た目の政策金利の高さに騙された投資家のほとんどがトルコリラでロスカットを経験しています。
少なくとも私の知る限りでは、トルコリラ投資で資産を築いた人を見たことがありません。
まとめ:大統領交代がターニングポイントに
また、仮に大統領が交代されたとしても次の大統領が必ず高金利政策に切り替える保証はないので、大統領が交代しても今のままの低金利が続く可能性もあります。
ですが、少なくとも今の低金利が続いている間は、高インフレと通貨下落に悩まされることになるので、現状でトルコリラの買いポジションを持つことはおすすめしません。
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