ネギ農家は儲かる


 ネギ農業は、手間がかからないので儲けやすい農業です。


 しかし、面積あたりの収入が少ないのと、栽培に時間がかかる作物なので、広い畑がないと生活していくことは難しいでしょう。


 この記事では、ネギ農家の平均年収や初期費用、メリット・デメリット、さらに設けるコツを解説します。


ネギ農家の年収


 ネギ農家の平均年収は150万円です。


 ネギだけで生活している農家は少なく、他の作物と組み合わせて栽培して収入を上げています。

 それでも1ha(ヘクタール)以上の広大な土地があれば、ネギ農業だけで生活していくことも可能です。


ネギ農家の初期費用


 ネギはハウスのいらない露地栽培なので、初期費用は300万円と比較的少なめです。


 それでも、面積あたりの収益額は少ないので、広い畑を用意する必要があります。

 使える資金と目指したい年収を天秤にかけて理想の土地を探しましょう。


ネギ農家のメリット


メリット1:収穫可能期間が長い

 ネギは収穫可能期間が長い作物です。


 『きゅうり』を1日収穫せずに放置しておくと翌日には巨大化していたり、『ミニトマト』を放置していると翌日には実が裂けていることもあります。

 よって、収穫期になると毎日必ず収穫作業を行う必要があります。


 一方で、ネギは数日くらいなら遅れて収穫してもまったく問題はありません

 他の業務が忙しい時に収穫を中断したり、市場価格が高騰するタイミングを見極めて出荷したりと、自由度が高いのが特徴です。


メリット2:日本中で栽培可能

 ネギは気温差に強い作物で日本中で栽培が可能です。

 そのメリットを生かして、他の作物をメインに栽培している農家のサブ作物としても人気があります。

 それでも、ネギは暑さに弱く寒さに強い作物なので、温暖な地域で真夏に栽培することは出来ません。


メリット3:初期費用が安い

 ネギは、ハウスのいらない露地栽培なので、初期費用は300万円程と安めです。

 これが施設栽培で『ミニトマト』を始めようとすると、ハウス1棟だけでも500万円かかり、大規模に行う農家なら2000~3000万円もの費用がかかってきます。

 いきなり大金を投資すると農業から撤退するのが難しくなりますが、少額から始めればもし農業が肌に合わないと感じた時も撤退の選択肢を残せます。


メリット4:所得率

 ネギは所得率の高い野菜です。


 所得率とは収益に対する所得のことです。

 例えば、100万円のネギを出荷して人件費や燃料代などを支払った後に30万円が手元に残ったら、所得率は30%です。


 そして、ネギの所得率は29.7%で、数ある農作物の中でも比較的高めの所得率となっています。

 同じヒガンバナ科ネギ属でも『タマネギ』の所得率は8.4%と低く、ネギの方が圧倒的に所得率が高く儲けやすいと言えるでしょう。


メリット5:栽培が容易

 ネギは栽培が容易な作物で家庭菜園でも人気です。


 ネギは水はけの良い土を好みほとんど水分を必要としないので、基本的に雨水だけで育ちます。

 あまりに日照りが続く時は水をあげますが、水をあげ過ぎると根腐りします。


 追肥も月に1度で良いですし、除草剤を使っているのなら草刈りもほぼ不要です。


メリット6:価格の高騰傾向

 実はネギの市場価格は年々上昇しています。


 2015年頃の市場価格は500~600円/kgでしたが、2023年には700~800円/kgにまで上昇しています。

 この要因は、単純に日本経済全体がインフレしていることもありますが、ネギ農家の数やネギの作付面積が減少していることで市場に出回るネギの量が減ったことです。


 これから先も急激にネギ農家の数が増えることは考えにくいので、さらに市場価格が上昇してもおかしくありません。


ネギ農家のデメリット


デメリット1:広い面積が必要

 ネギは面積あたりの利益が少ない作物です。

 ネギの10a(アール)あたりの所得は約30万円なので、ネギだけで年収300万円を稼ごうと考えるのならば、1ha(ヘクタール)もの広大な畑が必要になります。

 それだけ広大な畑を本州で見つけることは難しく、住む地域がかなり限定されるでしょう。


デメリット2:回転率が悪い

 ネギは、3月に種を撒いて11月に収穫を行っています。

 8ヶ月も畑を占領してしまうので、他の作物を同じ畑で作ることは難しいです。

 特に回転率の高い『ホウレンソウ』なら種まきからわずか1~2ヶ月で収穫できることを考えると、8ヶ月という期間はかなり長いです。


デメリット3:消費量の減少

 日本国内のネギ消費量は年々減少しています。


 ネギは香りや味が強いので、薬味や脇役に使われることが多く、一人暮らしでは使い切れないことが要因と考えられます。

 実際に、一般消費者向けのネギの消費量は減少しており、相対的に食品工場へ加工用として出荷される割合が増えています。


ネギ農家のコツ


コツ1:1本1万円のネギ

 ネギ業界には、1本1万円もする高級ネギ"モナリザ"があります。

 流石にそれほどまでの高単価な商品を作るのは難しいですが、他のネギ農家より単価を高くする努力は重要です。


コツ2:九条ねぎ

 高級ネギの代名詞ともなっている"九条ねぎ"は、京都の九条地区で作られていたことからそう呼ばれています。

 もし、京都で農業を始めようと考えているのなら、伝統的な"九条ねぎ"ブランドの名を借りるのがおすすめです。


コツ3:カットねぎへの加工

 かつてのネギ農家は、JAを通してスーパーに卸し、消費者の元へ届けるのが一般的でした。

 しかし、近年では単身世帯が増えたこともあり、家庭でのネギ消費量は減少しています


 そこで、栽培したネギをJAに卸すのではなく、カットねぎに加工して『ラーメン屋』などに直接販売するネギ農家も増えてきました。

 『ラーメン屋』のような毎日大量のネギをカットして使用しているお店にとっては、既にカットされている状態のネギはありがたく、多少価格が高くても購入してもらえます。


コツ4:収穫機の導入

 ネギは地中深くにまで根を張っているので、手作業での収穫は非常に手間と体力が必要です。

 ネギ農業で最も大変な収穫作業を機械化することは、体力的な負担の軽減になるだけでなく、自身の労働生産性を上げることにも繋がるので、収穫機の導入は真っ先に行うべきです。


 ネギ収穫機は、小型のモノでも200~300万円しますが、中古なら100万円以下でも見つかります。

 経営が軌道に乗るまでは中古品やレンタルで対応すると良いでしょう。


コツ5:有名産地

 ネギの都道府県別生産量ランキングは次のようになっています。


都道府県別ネギ生産量
1位:千葉県(13.8%)
2位:埼玉県(12.2%)
3位:茨城県(11.2%)
4位:群馬県(4.5%)
5位:北海道(4.4%)


 上位3県だけで、全国の約1/3の生産量を占めており、それら3県で盛んにネギが作られていることが分かります。

 このような生産量の多い地域は、ネギ生産のノウハウや体制が整っており、効率的に稼げるようになっています。

 もし、本気でネギ農家になろうと考えているのなら、千葉県、埼玉県、茨城県への移住を検討すると良いでしょう。


まとめ:ネギ農業は儲かる


 ネギ農業は、平均年収150万円と一見すると少なく見えますが、他の作物と組み合わせることで大きく儲けられる農業です。

 また、露地栽培なので初期費用を抑えて始められるのでリスクも限定的です。

 中には1本1万円で販売されているネギもあるくらいなので、少しでも高価格で出荷出来るように質を高める努力が求めらます。


 当サイトでは、『その他の農業』も多数紹介しています。ぜひ、御覧ください。