うどん屋は儲かるのか?
実際に、うどん屋で黒字経営をしているのはわずか3割のみです。
それでも、昔からの憧れとしてうどん屋を開きたい人は大勢います。
そこでこの記事では、うどん屋経営の年収や初期費用、メリット・デメリット、さらに儲けるコツを解説します。
うどん屋の年収
ただし、うどん屋のうち実に7割は赤字経営をしており、一部の成功した店舗が大きく稼いでその他のお店がギリギリの生活をしているのが現状です。
それでも、赤字経営しているうどん屋の多くは、老後の楽しみとして経営しているお店ばかりであり、戦略性を持って経営していけば黒字化することは難しくありません。
うどん屋の初期費用
飲食店としては平均的な初期費用となっています。
厨房設備に特別な機器はないので初期費用を抑えられますが、テーブル席や座席を多くしようとすると広い物件が必要となり、物件取得費が高額になりがちです。
うどん屋のメリット
メリット1:オペレーションがシンプル
うどんは調理が簡単な商品です。
注文が入ってから麺を茹でて、"かけうどん"なら出汁に麺を合わせるだけ、"ざるうどん"なら冷水で締めて盛り付けるだけとオペレーションがシンプルです。
"天ぷらうどん"もありますが、天ぷらの調理も具材に衣を付けて揚げるだけなので、アルバイトでも十分に調理が出来ます。
同じ麺類でも、『パスタ』の調理では麺と具材を和える工程で味の差が出やすく、初心者が調理をするのはやや難しいです。
メリット2:回転率が高い
うどん屋は、『そば屋』と並んで回転率が高い飲食店です。
お昼のランチ時にサクッと食べて帰りたい客が大半を占めます。
うどん屋の平均滞在時間は15~20分です。
もちろん、うどん屋の方が客単価が低いので一概には比較出来ませんが、うどん屋の滞在時間がかなり短いことが分かります。
回転率が高いので、狭い敷地で少ない客席数でも経営が成り立ちます。
敷地が狭い方が、家賃を抑えられるメリットもあります。
メリット3:メニュー数が少ない
うどん屋は『居酒屋』と比べると、メニュー数が少ない飲食店です。
お店によっては、おにぎりや天丼などうどん以外の商品も取り扱っているうどん屋もありますが、基本はうどんと天ぷらがメインとなります。
メニュー数が少ないことで、オペレーションがシンプルとなりアルバイトでも調理が出来ることや、在庫の種類も少なく済むので廃棄ロスを減らす効果もあります。
よく潰れかけのお店でメニュー数を増やして経営改善を目指す姿を目撃しますが、闇雲にメニュー数を増やすとむしろ経営効率が下がり赤字が膨らむことに繋がります。
メリット4:狭い敷地でも経営出来る
うどん屋は狭い敷地でも経営出来ます。
うどん屋は回転率が高く少ない客数でたくさんの客を捌けることはもちろんですが、それ以外にもカウンター席は狭い面積でたくさんの個人客を収容出来ます。
いくら広い店舗面積を持っていても、1人客が4人席のテーブルを使ってしまえば元も子もありません。
そういったリスクを減らせるカウンター席が一般的なのは、うどん屋の長所です。
メリット5:廃棄ロスの少なさ
うどんの原料は小麦粉と塩です。
どちらも調理しなければ長期保存の効く食材です。
その他にも、天ぷらも小麦粉と卵、おにぎりも米が主な材料です。
卵はあまり保存が効きませんが、毎日一定量を使うことになるので過度に仕入れ過ぎなければ廃棄することはないでしょう。
天ぷらに海老を使う場合にも、冷凍保存しておけばかなり長期間保存が効きます。
このように、うどん屋は廃棄ロスを生みにくいので、相対的に原価率を低くなりやすいです。
メリット6:市場規模の拡大傾向
うどん業界の市場規模は毎年2~3%の緩やかな増加を続けています。
一方でうどん屋の店舗数は年々減少しています。
それはつまり、昔に比べて1店舗あたりの収益性が上がったことを示しています。
うどん屋のデメリット
デメリット1:うどん屋の7割は赤字経営
意外なことに、うどん屋のうち7割は赤字経営をしています。
老後の楽しみとして、年金生活をしながらうどん屋を経営している人もいることは事実です。
それでも、黒字化しているうどん屋はたったの3割と考えると、うどん屋は難しいビジネスとも言えるでしょう。
綿密な事業計画と明確な勝因が思い当たらないのなら、『他の飲食店』を行う方が儲けやすいです。
デメリット2:低い客単価
うどん屋の客単価はおよそ800円で、飲食店の中では比較的客単価が低いです。
うどんは単品で頼まれることが多く、トッピングの天ぷらなどを頼んでも1000円未満で抑えられるお店が多いです。
うどん単品の客をいかに減らすかがうどん屋経営の肝になるでしょう。
デメリット3:強力なチェーン店
個人経営のうどん屋の強力なライバルとなるのは、丸亀製麺を筆頭とした全国チェーンのうどん屋です。
現在のうどんチェーンの店舗数はこのようになっています。
うどん店の店舗数ランキング
1位:丸亀製麺(約800店舗)
2位:はなまるうどん(約500店舗)
3位:なか卯(約450店舗)
4位:杵屋(約400店舗)
5位:ゆで太郎(約200店舗)
6位:山田うどん(約150店舗)
ランキング上位の店舗数を合計するだけでも2,000店舗以上あり日本の市区町村はおよそ1,700個あるので、単純計算でも各市区町村に必ず1つの大手チェーン店が存在していることになります。
最大手のはなまるうどんの"釜揚げうどん(並)"は340円ですが、さらに毎月1日には半額セールも行っています。
このように、大手チェーン店は個人経営のお店とは比べ物にならない安売りをしているので、値段だけで比較されると勝ち目がありません。
デメリット4:長時間労働
飲食店オーナーの労働時間はお店の営業時間内だけではありません。
開店前の準備から閉店後の締め作業まで行うと、営業時間+2時間は必要です。
さらにうどん屋特有の事象として、自分でうどんの生地から作る"手打ちうどん"の場合はさらに3~4時間の仕込み作業がかかります。
そうなると、仮に8時間営業だったとしても労働時間は12時間以上になってしまいます。
体力のある若いうちならそれも可能ですが、定年近い年齢になって毎日これだけの労働をしていくことは大変に難しいことです。
実際に、若いうちは"手打ちうどん"にこだわって営業していた店主が、高齢になって"機械打ちうどん"に切り替えることはよくあります。
デメリット5:テイクアウト
近年急速にテイクアウト需要が高まっている中で、うどん屋はテイクアウトに対応しにくいお店です。
うどんをテイクアウトしようとしても、出汁が溢れてしまいますし麺が伸びて不味くなります。
こればかりはどうしようもないので、諦めてイートインに注力しましょう。
うどん屋のコツ
コツ1:1日100杯の販売
客単価800円のうどん屋で黒字化をするのならば、1日100杯のうどんを売る必要があります。
これなら、1日の売り上げが80,000円となり、そのうち10%が利益として残せるのなら1日8,000円の収入となります。
しかし、うどん屋の平均客数は1日約60人です。
平均より1.5倍以上の客が来ないと、うどん屋で黒字化するのは難しいです。
7割のうどん屋が赤字になっている理由はここにあります。
コツ2:讃岐うどん
日本人の共通認識として、『うどんと言ったら"讃岐うどん"。』という風潮があります。
讃岐うどんは、コシの強い麺とイリコの出汁が特徴です。
実際に讃岐うどんが有名な香川県は、うどんの消費量が全国一で自ら"うどん県"を名乗っているほどです。
全国的に見ても、"讃岐うどん"を謳っているお店は各地にあります。
香川県以外の地域でうどん屋を始める場合でも、讃岐うどん屋として開業すると集客効果が高くなります。
コツ3:自家製麺or仕入れ麺
うどん屋の大きな悩みに、自家製麺と仕入れ麺のどちらが良いかという問題があります。
自家製麺なら自分の好みのうどんに出来ますが、毎朝の仕込みの時間が大変です。
一方の仕入れ麺なら仕込みの時間を短縮出来ますが、コストが割高になるのと廃棄ロスが発生するデメリットがあります。
自家製麺なら"手打ちうどん"という看板を掲げられるメリットがありますが、あえて仕入れ麺にして空いた時間を経営者として売り上げアップや経費削減の戦略を練る時間に当てる方が良いでしょう。
コツ4:フランチャイズ経営or個人経営
うどん屋経営者のもう一つの選択肢が『フランチャイズ(以下FC)に加盟する』か、『個人経営のうどん屋にする』かです。
大手チェーン店の中では、"はなまるうどん"がFC形式を取っています。
FCに加盟することで、圧倒的な知名度のある看板を使えたり、ノウハウを利用出来るメリットがありますが、FC加盟料や毎月のマージンが取られるので、個人経営店以上の売り上げが無いと赤字になります。
そもそも儲かりにくいうどん屋を始めたい人は、うどんに対して強いこだわりを持っている人が多いでしょう。
FCに加盟してしまうと、マニュアルに沿ったうどんしか作れなくなってしまい面白みがありません。
どうせうどん屋を始めるのなら、個人経営で自分の理想とするお店作りをする方が良いでしょう。
コツ5:客単価を上げる
再三述べていますが、うどん屋の客単価は約800円です。
客単価800円なら1日100人の客数で8万円の売り上げになりますが、客単価1,000円になれば1日80人で同じ売り上げになります。
個人経営の集客力で1日100人を集めるのは難しいので、客単価を1,000円に上げる方が現実的です。
うどん屋の客単価を上げる方法は、単価の低い"かけうどん"や"ざるうどん"の単品を頼まないようにすることです。
メニュー表の一番目立つ所に単価の低い"かけうどん"や"ざるうどん"を載せるのではなく、単価の高い"きつねうどん"や"天ぷらうどん"をお店のイチオシとして載せるとそれらが売れるようになります。
その他にも、"うどんと天丼のセット"のような男性サラリーマンを対象としたメニューも高単価でおすすめです。
コツ6:コンセプトを明確にする
同じうどん屋でも、ランチタイムの男性客をターゲットに500円以下のうどんを売るお店もあれば、夜の家族連れを対象に1,000円以上のうどんを売るお店もあります。
低単価のうどんは大手チェーン店と競合してしまうので、価格で勝つのは難しくその他の付加価値が見出だせないと儲けるのは難しいでしょう。
反対に中~高価格帯のうどん屋のチェーン店は少なく、『せっかく高いお金を払うならチェーン店じゃない所に行こう。』と考える客も一定数いるので、大手との差別化が容易です。
それでもやはり、高いお金を払って期待を下回るうどんが出てきたら二度とお店に来ることはないので、よりうどん職人としての腕が試されます。
まとめ:うどん屋経営はあまり儲からない
それでもこだわりを持って上質なうどんを提供し続ければ、徐々に常連客が増えて経営が安定するでしょう。
低価格路線は大手チェーン店が強力なため、中~高価格帯で勝負する方が成功率は高いです。