おにぎり屋は儲かるのか?


 おにぎりという商材は誰でも簡単に作れるものなので、わざわざお店で買う人は少なく、多くのおにぎり屋は苦戦を強いられています。

 しかし、食材にこだわったり見た目にこだわったりすることで、"普段のおにぎり"を超えられれば、ちゃんと経営を続けていくことは出来ます。

 この記事では、おにぎり屋の平均年収や初期費用、メリット・デメリット、さらに儲けるコツを解説します。


おにぎり屋の年収


 おにぎり屋の平均年収の統計は見つかりませんでした。


 ただし、多くのおにぎり屋が1年を持たずして廃業しているのが事実です

 流行りに乗っかって安易に出店した人の大半はすぐに廃業したことが分かります。


 それでも、安定した経営をしているお店もあり、それらは年収300~400万円は稼いでいると推測されます。


おにぎり屋の初期費用


 おにぎり屋の初期費用は100~300万円です。


 おにぎり屋は炊飯器と冷蔵庫だけでも開業することは出来るので、自宅の軒先で始めるのなら100万円、賃貸物件を借りて開業する場合でも300万円で始められます。


 普通の飲食店なら1000万円が相場となるので、おにぎり屋はかなりの少資本で始められます。


おにぎり屋のメリット


メリット1:朝・昼・夕方に売れる

 おにぎりは手軽に食べられる分だけ、手軽に売れる商品です。


 朝の通勤途中に買って通勤しながら食べたり、ランチタイムにイートインスペースでゆっくり食べたり、仕事帰りにオヤツとして買われたりと、一日中売れる機会があります。

 重たいメニューである『焼肉屋』や『カレー屋』が朝に売れることはほとんどないでしょう。


 意外にも朝から晩まで満遍なく売れる商品は少なく、おにぎり屋の大きな長所になります。


メリット2:修行がいらない

 おにぎりは具材を乗せて握るだけなので、素人でも簡単に作れる料理です。


 『寿司屋』や『パスタ屋』には修行期間がほぼ必須ですが、おにぎり屋なら数時間のレクチャーでそれなりのおにぎりが作れるようになります。

 よって、アルバイトを雇う場合にも手間や教育費をかけずにすぐに戦力として使えます。


メリット3:設備投資不要

 おにぎり屋は、特に設備が少なくて済む飲食店です。


 おにぎりだけを取り扱うのならば、炊飯器と具材を入れる冷蔵庫さえあれば開業出来ます。

 卵焼きや簡単な惣菜もメニューに入れる場合でも、ガスコンロがあれば作れます。

 自宅の軒先でテイクアウト専門店を開くのなら、自宅にあるものだけで始められるでしょう。


 普通の飲食店なら厨房機器だけでも200~300万円はかかるので、低資金・低リスクで始められるのはおにぎり屋ならではの特徴です。


メリット4:低い原価率

 皆さんが良く目にしている『コンビニ』のおにぎりの原価はわずか10円です。

 これを150円ほどで販売しているので、コンビニおにぎりの『原価率』は6~7%です。


 おにぎり屋の場合は、使う米にこだわったり具材を多く乗せたりするので原価は30円ほどになりますが、それを平均200円くらいで販売すると原価率は15%です。


 一般的な飲食店の『原価率』は30%が目安なので、おにぎり屋の『原価率』の低さが目立ちます。


メリット5:テイクアウト需要

 昨今の情勢によりテイクアウト需要は高まっています。

 そして、おにぎり屋はテイクアウトが中心のお店になります。


 テイクアウトは、イートインのように回転率を気にしなくてよかったり、人件費や物件の家賃を抑えられるので、経営面のメリットは大きいです。

 反対にテイクアウトに対応しにくい『うどん屋』や『ラーメン屋』はここ数年で廃業したお店もたくさんありました。


メリット6:ターゲット層

 おにぎりは、弥生時代から日本にある料理で、日本人には欠かせないものとなっています。


 『タピオカ』や『クレープ』を食べたことのない人はいるかと思いますが、病気などの特別な事情を除いておにぎりを食べたことのない日本人はほぼいないでしょう。

 『タピオカ』や『クレープ』は、若い女性という狭い範囲をターゲットにしているのに比べて、おにぎりは老若男女問わず広い範囲をターゲットにしています。


 もちろん、ターゲット層が広く潜在的な客数が多い方が商売しやすいのは当然のことです。


おにぎり屋のデメリット


デメリット1:簡単に作れる

 おにぎりは、日本食の中でも最も簡単に作れる料理です。

 調理の手間がかからないのは飲食店としてはメリットになります。


 しかし反対に、誰でも作れるものなのでわざわざお店で買う必要がありません。

 『パスタ』も自宅で作れる商品ではありますが、鍋やフライパンなどの洗い物が多く手間ですし、自宅で作るものよりもお店のパスタの方が美味しいことが多いので、わざわざお店に出向く価値があります。


 このように、おにぎり屋には集客効果があまりないので、人通りの多い場所に出店して"ついで買い"を狙うのが良いでしょう。


デメリット2:コンビニおにぎりの台頭

 かつての『コンビニ』おにぎりは、『美味しくない。』と悪い評判が目立っていました。


 しかし近年では、『コンビニ』各社がおにぎりを集客の目玉として力を入れており、客からの評判も上々です。

 わざわざおにぎりしか売っていないおにぎり屋に出向かなくても、『コンビニ』でお菓子やジュースと共に美味しいおにぎりが買えます。


 集客力ではまったく歯が立たないので、"手作り"や"出来立て"を謳って『コンビニ』との差別化を行うべきでしょう。


デメリット3:低単価

 おにぎり屋の平均客単価は300~400円です。

 飲食店の中では客単価の低い『うどん屋』ですら客単価は800円、高単価な『焼肉屋』なら3,000~5,000円です。


 仮に売り上げの20%が利益として残るのなら、客1人あたり70円の利益です。

 毎日100人の客を迎えて、ようやく1日7,000円の収入になります。


デメリット4:雨の日は売れない

 想像すると分かりやすいですが、雨の日に傘をさしながらおにぎりを食べることはまずしません。

 一般的に、雨の日のおにぎり屋の売り上げは晴れの日の1/3ほどにまで激減します


 せっかく大量にお米を炊いて準備をしていても、突発的な雨が通勤時やお昼時、帰宅時に起きてしまえば、まったく売れずに廃棄しなければなりません。

 毎日の天気予報を確認するのはもちろんのこと、数時間おきに気温や雨雲の動きまで確認し、在庫量を上手くコントロールしましょう。


デメリット5:話題性が強い

 2020年頃から始まった外出自粛ムードの中で、急速に店舗数を伸ばしたのがおにぎり屋です。

 言い換えれば、現在のおにぎり屋はブームによる売り上げ増加の恩恵を受けてなんとか経営している状態です。

 市場が飽和仕切ってしまった今からおにぎり屋を始めると、ブームが過ぎ去って業界全体の売り上げが減少している中で戦わなければなりません。


おにぎり屋のコツ


コツ1:食材にこだわる

 誰でも簡単に作れて馴染みのある"おにぎり"だからこそ、お店で提供するものは高級な食材特別感が欲しいところです。


 "コシヒカリ"のようなブランド米を使うことはもちろんのこと、炊飯器もいくつかのメーカーのものを試してもっとも自分のおにぎりに合うものを選ぶべきです。

 さらに、具材も適当にスーパーで買うのではなく、ブランドや産地にこだわると良いでしょう。

 『コンビニや自宅のおにぎりよりも美味しい。』と感じてもらえなければ、リピーターは生まれません。


コツ2:人気の具材

 おにぎりで人気の具材は、コンビニの陳列棚を見ると良く分かります。

 ツナマヨ明太子いくら昆布おかかと、昔からある定番商品が人気です。


 それらの定番商品と合わせて専門店ならではの、炙りハラミカルビ豚角煮チャンジャカニ天むすなどの変わり種も用意するとコアなファンを獲得出来ます。


コツ3:惣菜セット、味噌汁、漬物

 店内のイートインコーナーで食べる人をターゲットに、おにぎりのお供となる惣菜や味噌汁のセット販売をするとおにぎり屋の問題の一つである客単価の向上に繋がります。


 お持ち帰りの場合は、汁物の販売は難しいかもしれませんが、漬物や簡単な惣菜とのセット商品なら手軽に購入してもらえるでしょう。


 その他にも、おにぎりを単品の他に3個セットも用意しておくと、客単価を上げることが出来るかもしれません。


コツ4:インスタ映えを意識する

 既に多くのおにぎり屋が実践していますが、具材をおにぎりから溢れるように盛り付けると、コンビニで普段見るおにぎりと差別化が図れてSNSにアップしてもらえる確率が上がります。

 SNSにアップしてもらえばタダで宣伝が出来るので、インスタ映えには力を入れたいところ。

 お店の外観も一緒に撮られるかもしれないので、お店の清掃も毎日行うと良いでしょう。


コツ5:出店場所

 おにぎり屋の出店場所は、手軽に食べ歩き出来ることを考えて通勤途中の会社員を狙うと良いです。

 基本的におにぎり屋に集客力はないので、人通りが多い路面に出店するのが鉄則です。


 その他には、週末の花見などのイベント会場にキッチンカーで営業をするのも効果的です。


コツ6:衛生管理

 コンビニのおにぎりは個別包装されていたり食品添加物を入れており、常温でしばらく放置しておいても腐ったり食中毒になることはほとんどありません。

 しかし、おにぎり屋のおにぎりでそれを行うことは難しいので、仮に調理段階で微量の菌が付着しただけでも、時間を追うごとに菌が増殖して食中毒のリスクが高まります。

 完全に無菌状態にすることは不可能ですが、厨房を常に清潔に保つことや、おにぎりを直接素手で調理しないことで極力菌を付着しないようにしましょう。


まとめ:おにぎり屋は客単価が肝


 おにぎり屋は、手軽に購入出来るので多少の客数を確保するのはそれほど難しくありません。

 しかし客単価が300~400円とかなり低いので、客単価を上げる努力は必須となるでしょう。

 惣菜や味噌汁、漬物のセット販売を行ったり、おにぎりを3個セットで販売するのも有効です。

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