サケ漁は儲かる


 サケは、1匹1万円ほどもする高額な魚のため、漁業全体で見ても稼げる漁業です。

 しかし、ほぼ北海道でしか取れないことなど誰でも簡単になれる仕事ではありません。

 この記事では、サケ漁の平均年収や盛んな地域、サケ漁のシーズンなどを解説します。


サケ漁師の平均年収


 サケ漁師の平均年収は700万円です。

 これは、自営業者から雇われ漁師までサケ漁師全体の平均年収です。

 それでも、会社員の平均年収が400万円程度であることを考えると、サケ漁は儲かる漁業と言えるでしょう。


サケ漁が盛んな地域


 サケの漁獲量が多い都道府県は以下の通りです。


都道府県別サケ漁獲量
1位:北海道(90.8%)
2位:青森県(3.8%)
3位:岩手県(3.4%)
4位:宮城県(1.0%)
5位:新潟県(0.3%)


 日本国内で流通している国産サケのほぼすべては北海道産です。

 それ以外にも東北地方でも僅かながら水揚げがされています。


北海道知床半島のサケ漁

 知床半島は北海道の北東部に位置しており、半島の先端から北方領土は目と鼻の先です。

 そんな知床半島は北海道の中でも特に多くのサケを漁獲しています。


 なぜ、日本全国で北海道がサケの一大産地になっているのかというと、毎年多くのサケの稚魚を放流しているからです。

 サケは、川で生まれた後、海へ旅立ち、再び産卵期になると生まれた川へ戻る習性があります。

 付近の川でサケの稚魚を放流しておき、数年後成体となったサケがその川付近に現れた際に漁獲するのがサケ漁の一連の流れです。


 その他にも、海へ出たサケはロシアとアメリカの間に広がるベーリング海を主に回遊するため、そこから近い北海道や東北地方がサケの産地になっています。


ノルウェーのサーモン養殖

 スーパーで売られている海外産の養殖サーモンをよく見るとその大半がノルウェー産です。

 それもそのはず、世界で一年に生産されている養殖サーモンの量は320万トンですが、その内45%の140万トンがノルウェーで生産されています。

 ノルウェーと比較して、日本の年間養殖量はたったの2万トンしかありません。

 近年では安い回転寿司の普及により、日本国内のサーモンの消費量も増えており、現在多くの企業がサーモン養殖に乗り出そうと計画しています。


サケ漁のシーズン


 "秋鮭(あきざけ)"という言葉もあるように、サケの旬は9~10月です。


 サケ漁のピークもこの9~10月であり、そこから5月頃までシーズンは続きます。

 これは、サケの産卵期が関わっており、普段は大海を泳いでいるサケが産卵の為に故郷の川へ戻ってくるタイミングを狙って漁を行っているからです。


 反対に5~8月には、サケ漁がほとんど行われていないので、養殖物のサケが店頭に並びます。


サケ1匹の値段


 サケの値段は、平均的な3.0kg前後の大きさで、1匹1万円ほどです。


サケの最高値

 サケの最高値は、2023年の初セリで記録した1キロあたり23,500円です。

 1匹3.0kgで計算すると、1匹あたり8万円の値が付いたことになります。


鮭児の最高値

 サケ漁の際に誤って成熟前のサケが取れることがあり、それを"鮭児(けいじ)"と呼びます。

 鮭児は希少性が高く、2019年には1匹64万円で競り落とされました。


鮭の漁獲量推移

 日本国内の鮭漁獲量は年々減少傾向にあります。


 2009年の約25万トンをピークに、2019年時点では約5万トンにまで減少しており、この下落率は他の水産物と比べても顕著です。


 このようにサケの漁獲量が急激に減少している要因は、地球温暖化に伴う海水温度の上昇によりサケの回遊ルートが変化したことが考えられます。


 サケは水温により季節を感じ取り、河川から大海へ泳ぎだします。

 しかし、近年の水温上昇により、十分に成長する前に海洋へ移動する個体が増え、結果として生存率が下がっています。


 また、サケ漁師や行政も個体数減少の対策として、人工的に受精や孵化を行った稚魚を放流していますが、その回帰率はわずか0.03%しかなく、仮に1万匹のサケの稚魚を放流してもたった3匹しか成長して元の川に戻ってこない計算です。


 いくらサケが高単価で取引されていても、これではまったく利益が出ません。


サケと養殖業


環境負荷が少ないサケ養殖

 サケ養殖は環境に優しい養殖業として注目を集めています。

 『マグロ』の養殖に必要な餌は、マグロ1kgあたり10~15kgも必要ですが、サケなら1kgあたり1~2kgの餌で十分です。

 このような背景から、サケ養殖は世界的に見ると増加傾向にありますが、日本はこの流れにやや遅れています。


2種類の養殖スタイル

 サケの養殖には、大きく分けて2種類があります。

 一つは天然の海や川で養殖する海面養殖内水面養殖、もう一つは巨大なプールのような水槽で養殖する陸上養殖です。

 広く普及しているのは海面養殖や内水面養殖で、コストが陸上養殖に比べてかからないのがメリットです。

 それでも、ノルウェーでは超大規模にサケ養殖をしてコストを抑えているのに比べて、日本のサケ養殖はそれぞれの事業者が小規模に行っているのでコスト高が問題となっています。


サケとマスの違い


 実は、サケとマスに明確な違いはありません

 一応は海に降るものをサケ、川に残るものをマスと呼んでいますがその定義は曖昧です。


サケとサーモンの違い

 同様にサケとサーモンも同じサケ科の魚ですが、こちらは私たち消費者にとっては大きな差があります。


 サケは海水で生息した天然物を指すので、寄生虫が含まれている危険性があり過熱する必要があります。

 一方のサーモンは、淡水で養殖された物を指すことが多く、寿司や刺し身など生食可能です。


 確かに、コンビニのおにぎりに入っているのは"サケ"ですが、回転寿司のネタは"サーモン"ですね。


まとめ:サケ漁師になるなら北海道への移住が必須


 サケ漁師の平均年収は700万円とかなり高額です。

 しかし、国内のサケの9割は北海道産であるため、北海道への移住が必須と言えます。

 しかし言い換えれば、それが参入障壁となっており、ほかの県の漁師と価格競争になりにくいのは大きなメリットとも言えます。