シラス漁は儲かるのか?


 シラスはブランド力が弱く大金を稼ぐことは難しいです。


 しかし、『マグロ漁』が1匹釣れるかどうかで年収が100万円単位で変わってしまうのに対して、シラスは日による漁獲量の差が小さいため、漁業の中では安定的に稼げます

 また、シラスは他の魚に比べて腐りやすく素早い処理が求められるので、加工工場を持って6次産業化をするメリットが大きく、さらに収入を伸ばせます。


 この記事では、シラス漁業の平均年収やしらす漁の盛んな地域、シラスの漁獲方法や6次産業化を解説します。


シラス漁師の平均年収


 シラス漁師の平均年収は350万円です。

 遠洋漁業の『マグロ漁』や『カニ漁』に比べると収入は低めですが、海岸付近で漁業を行うため、毎日家に帰れます。


 私たちがスーパーで見かけるシラスは熱処理された"釜揚げシラス"と呼ばれるものです。

 その釜揚げシラス1匹の重さは約0.1g(グラム)で、1匹あたりの価格は0.1円です。

 その0.1円を積み重ねて年収350万円になるには、毎日大量のシラスを漁獲しなければなりません。


シラス漁が盛んな地域


 シラス漁が盛んに行われている都道府県は次の通りです。

都道府県別シラス漁獲量
1位:愛知県(19.1%)
2位:静岡県(8.3%)
3位:大阪府(6.2%)
4位:茨城県(5.7%)
5位:愛媛県(4.7%)


 主に太平洋側でシラス漁が盛んに行われています。


篠島(愛知県)のシラス漁

 シラス漁獲量日本一の愛知県の中でも、最もシラスを水揚げしているのは三河湾に浮かぶ小さな島"篠島(しのじま)"です。

 島全体でシラスに力を入れており、鮮度が求められる"生シラス"は『篠島だから食べられる味』と好評です。


シラス漁のシーズン


 本来、シラスは一年を通して取ることが出来ますが、ほとんどの海域で水産資源の保護の観点から1~3月を禁漁期間にしています。

 よって、4月から12月がシラス漁のシーズンです。

 また、シラスの旬は年に2回あり、4月頃に水揚げされるものを"春シラス"、9月頃に水揚げされるものを"秋シラス"と呼ぶこともあります。


シラスって何の魚なの?


 シラスは、真イワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの稚魚の総称ですが、一般に売られているシラスのほとんどはカタクチいわしの稚魚です。

 似たような言葉に『シラスウナギ』がありますが、こちらはウナギの稚魚を指し、まったく別の言葉です。

 元々のシラスの意味は、ウナギやイワシ、ニシン、イカナゴなど様々な稚魚の総称を指していましたが、現代になり市場が発展していく中で主にイワシの稚魚をシラスと呼ぶようになりました。


シラス漁の方法


 1円玉より小さなシラスを1匹ずつ釣り竿で釣っていてはまったく商売にならないので、シラス漁は巨大な網を海中に沈めて引っ張る"船びき網漁"で行います。


 1隻の船で行う方法もありますが、基本的には3隻1組となって行われています。

 シラスは稚魚であることから、他の魚介類に比べて圧倒的に品質が落ちるのが早いです。

 そこで、2隻の船で巨大な網を引いて大量のシラスを漁獲すると、残りの1隻がそのシラスをすぐに漁港まで持っていき、その場でセリが行われます。


シラスとブランド化

 シラス漁師の年収が上がらない要因の一つに、シラスのブランド化の難しさがあります。

 『マグロ』なら青森県産の"大間のマグロ"だったり、『カニ』なら福井県の"越前ガニ"のように、魚介類にはそれぞれ有名な産地がありそれらは特に高値で取引されています。

 しかしシラスには、誰もが知っている産地やブランドがなく差別化が出来ないので、どうしても他の漁場との値下げ合戦が起きてしまいます。


シラスは足が早い


 シラスは、稚魚であることから特に足が早い(腐りやすい)海産物です。

 水揚げ後すぐに釜で茹でて"釜揚げシラス"にするか、さらに天日干しした"ちりめんじゃこ"にしなければ、腐ってしまいます。

 よって"生シラス"は大変貴重で、私たちが生シラスを食べるには漁港付近の飲食店にいくしかありませんし、1人前1,000円前後とやや高額です。


シラスと6次産業化


 先程も述べた通り、シラスは水揚げ後すぐに加工しなければ腐ってしまうので、他の鮮魚と違いスーパーに並ぶまでに食品工場を経由します。

 漁師から消費者へと魚介類が渡るまでに関わる人や企業が多くなるほど、中間マージンが多くなり、結果として漁師の取り分が減ります。

 そこで、シラス専業の漁師の中には自分で工場を作って自社で加工まで行う人もいます。

 工場と聞くと大掛かりな設備をイメージしますが、個々に水揚げされてきたシラスを釜で茹でたりするだけなので、狭い敷地と少ない設備でも十分に対応可能です。

 初期投資や人件費がかかりますが、経営が起動に乗れば収入を一気に跳ね上げることが出来るでしょう。


まとめ:シラス漁師は6次産業化もあり


 当サイトでは、初期投資や人件費がかかることや、人材管理の手間が増えるので6次産業をあまりおすすめしていません。

 それでも、シラス漁に関してはブランド化が難しいことや商品単価が低いことを考えると、6次産業化するメリットも十二分にあるのではないでしょうか。

 その場合には、やはり漁獲量の多い愛知県で企業するのがおすすめです。